【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 101】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「映画監督ヤン ヨンヒと家族の肖像」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 101】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「映画監督ヤン ヨンヒと家族の肖像」



「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
6月のオススメ作品はこちら!

《特集上映》映画監督ヤン ヨンヒと家族の肖像

ひとつの家族を通して見えてくる、近くて遠い隣の国と日本の歴史のうねり。

すぐ隣の国、北朝鮮。拉致問題のことや、小泉純一郎元首相が北朝鮮へ訪問したニュース映像をみた小さいころの記憶がおぼろげに残っている。
小学生になったばかりのわたしは、すぐ隣にある同じような顔をした人々が暮らす国がとても怖い国なのだと覚えた記憶があります。しかし、ほんとうにそうなのか。
在日コリアン二世であるヤンヨンヒ監督の『かぞくのくに』をみて、凝り固まり単純化したイメージだけでは語ることのできない歴史の複雑さに唖然としました。
そんなヤン ヨンヒ監督によるドキュメンタリー3部作を一挙上映!
朝鮮半島と日本の悲劇的な歴史のうねりのなかで、自らの家族の《肖像》を親密なタッチで描きます。



ヤン監督の最初のドキュメンタリー『ディア・ピョンヤン』。
朝鮮総連の幹部であり、1959年に始まる「帰国事業」の際に、3人の息子を北朝鮮に帰国させた父ヤン・コンソンが主人公。
在日二世として監督自らが感じてきた違和感と葛藤を軸に、踏んだことのない北朝鮮を祖国と決めて生きていくこととはどういうことなのか。
最も理解しがたい最愛の父との10年間のなかで、互いを受け入れる方法を模索する様子が描かれます。

第二作目は、『愛しきソナ』
前作『ディア・ピョンヤン』を発表したあと、北朝鮮政府から入国禁止を言い渡された監督が、会えなくなった姪っ子ソナを中心に、北朝鮮で生きる家族の肖像を映し出します。

そして、この3部作の最終章『スープとイデオロギー』です。
アボジ亡き後、アボジを支えてきたオモニについに焦点があたります。
なぜ、頑なに“北”を信じ続けてきたのか、いままで語られることのなかった秘密、済州島4・3事件の秘密がオモニから明かされます。


単体でみてももちろん素晴らしいですが、それぞれの作品が密接にかかわった3作はぜひいっしょにみてほしいです。
辛く重たい歴史を知ると同時に、笑えるような場面もあり、悲喜交々がぎゅっと詰まっています。
政治と生活が密着していること、それをこんなにも雄弁に語ってしまう凄さ。自分には経験しようのないとてもパーソナルな日記のようであり、「怖い国」と思っていたすぐ隣の国の人々の日常のなかには、わたしが経験したような笑いがある。
実の親子でも分かり合えないことはたくさんあり、でも相手にむきあって理解しようとすることはできる。
北朝鮮と韓国と日本。こんなにも近いのに、わたしは全然知らないことがたくさんあることを思い知らされます。
最終章『スープとイデオロギー』で登場した監督のパートナー、カオルさんが、記憶を失いつつあるオモニの肩にそっと置いた手のぬくもりが忘れられません。
3作とも必見!


執筆:川添結生氏(京都シネマ)




6/9(金)公開
《特集上映》映画監督ヤン ヨンヒと家族の肖像
ヤン ヨンヒ監督作品から『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『スープとイデオロギー』の3作品を上映します。


【上映スケジュール】
詳しくは京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。


『ディア・ピョンヤン』
2005/日/108分
監督:ヤン ヨンヒ
©PLACE TO BE, Yang Yonghi



『愛しきソナ』
2009/韓、日/82分
監督:ヤン ヨンヒ
©PLACE TO BE, Yang Yonghi





『スープとイデオロギー』
2021/韓、日/118分
監督:ヤン ヨンヒ
©PLACE TO BE, Yang Yonghi


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723