【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 95】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「郊外の鳥たち」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 95】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「郊外の鳥たち」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
4月のオススメ作品はこちら!

 

郊外の鳥たち

 

過去の遺言か、未来への預言か。中国の鬼城を舞台に、独創的な世界が紡がれる。

近年、『凱里ブルース』のビー・ガンを筆頭に『象は静かに座っている』フー・ボー、『春江水暖』グー・シャオガンなど、1980年・90年代生まれの中国第8世代の活躍がめざましく、今回紹介する『郊外の鳥たち』のチウ・ションもそのひとりです。
2018年ロカルノ国際映画祭で上映されると、彼の才能を絶賛する声が相次ぎ、ハリウッドリポーター紙は「“スタンド・バイ・ミー” meets カフカの“城”」と称賛しました。
神秘的でポエティックな様相を帯びた、まったくあたらしい映画言語・表現に挑戦したチウ・ションの意欲的なデビュー作、ついに公開です!

地盤沈下のために“鬼城”と化した中国の地方都市の地質調査に訪れた青年ハオは、廃校となった小学校の机の中から、自分と同じ名前の男の子の日記を見つけます。
そこに記録されていたのは、開発が進む都市のなかで生き生きと日常を謳歌する子どもたちの姿でした。
――しかし、これは過去の記憶なのでしょうか?それとも未来の記憶…?
 やがて子どもたちは、ひとり、またひとりと姿を消していき…。

 

この映画は、観ている途中も観終わったあともいったいどんな映画だったのか、空をつかむような気持になります。
物語と隔たりを感じつつ、その交わりそうで交わらない隔たりに恋焦がれてしまいます。
ノンリニアな時間軸で構成された本作での、子どものハオの日常は、土地に触れ風を感じ、抱擁が示す親密さと連帯にあふれています。
一方、同列に語られる都市の調査をする青年ハオは、なにかを失ったかのように彷徨い、心もとない表情を浮かべています。
まるで、土地が見た夢のような過去・現在・未来があわさった物語が展開していきます。
映画のなかでどんどん迷子になること。それがこんなにも心地よく許される映画はめずらしい。明確な物語は期待しないでほしい。
しかし、森の哲人ヘンリー・デヴィッド・ソローがいうように、
迷子になることは、「(…)つまり世界の手がかりを失って、はじめてわたしたちは自分自身を探しはじめる。そして自分がどこにいるかを理解し、自分をとりまく無限の可能性の広がりに気がつく」ことです。
青年ハオの心もとなさはどこから由来するのか。鳥のようにさえずり、走り回る子どもたちの日常がなんだか懐かしく思えてきます。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



4/28(金)公開
『郊外の鳥たち』
(原題)郊区的鸟
PG12/2018/中国/114分
監  督:チウ・ション 
出  演:メイソン・リー、ホアン・ルー、ゴン・ズーハン
©BEIJING TRANSCEND PICTURES ENTERTAINMENT CO., LTD. , QUASAR FILMS, CFORCE PICTURES, BEIJING YOSHOW FILMS CO., LTD. , THREE MONKEYS FILMS. SHANGHAI, BEIJING CHASE PICTURES CO., LTD. ,KIFRAME STUDIO, FLASH FORWARD ENTERTAINMENT / ReallyLikeFilms


【上映スケジュール】
4/28(金)~5/18(木)
詳しくは京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。

 


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723