「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
3月のオススメ作品はこちら!
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
愛と笑いを通奏低音に移民とクィアの物語を紡ぐカンフーアクションSF映画。
映画ファンの絶大なる信頼を獲得してきた人気スタジオ“A24”史上最大のヒット作として話題沸騰中の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。
全世界興行収入1憶ドルを突破し、インディペンデントスタジオとしては、異例中の異例のメジャースタジオ級ヒットを達成したことでも注目を浴びています。
そして、人々の熱狂は、賞レースにも影響を及ぼし、本年度アカデミー賞では最多ノミネートの10部門11ノミネートを記録。
アカデミー賞大本命として注目を浴びる本作が、ついに日本でも公開されます!
経営するコインランドリーに監査が入り、大忙しのエヴリンは、父ゴンゴンの介護や大学を中退し、同性の恋人を連れて来た娘や優しいだけで頼りにならない夫を抱え、トラブル続き。
そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託されます。
しかも、なんと巨悪の正体は娘のジョイだった…!?
『スパイダーマン:スパイダーバース』や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』などMCU作品で採用されてから大人気となった「マルチバース世界」、そして「マルチバース×カンフー」、異能戦闘シーンなど、ただその宣伝を聞くだけではなんのことだかよく分からないかもしれません。
しかし、この映画で使われる「マルチバース」は世界が外側へ拡張していくのではなく、内側へと向かっていく。
わたしたちと同じように(いや、それ以上かもしれない)挫折と失敗を繰り返してきた移民のアジア系女性エヴリンが自分の人生と、娘ジョイを救うために立ち向かいます。
わたしの人生が唯一無二の、幸福にみちあふれた人生じゃないのかもしれないと考えてしまう夜が、インターネット社会において増えた今、哲学者ニーチェのように「この人生をもう一度!」と高らかに宣言するにはどうしたらいいんだろう。
その答えのひとつがこの映画にはぎゅっと詰め込まれているような気がします。
前作『スイス・アーミー・マン』でカルト的な設定の映画ながら、たくさんの人々を夢中にする奇妙な笑いにみちにあふれたブロマンス映画を作り上げた奇想天外な天才コンビ・ダニエルズの無限の宇宙のようにひろがる想像力は、今作でも予想の斜め上を高速で飛びぬけていく。
すがすがしいほどくだらなくて、こんなにも胸熱なSF映画なんていままであったでしょうか。
時代を塗り替える一作といっても過言ではないと思います。
異性・同性、そして家族の愛を高らかに謳い、ニヒリズムに対抗する快作はぜひ劇場で。
執筆:川添結生氏(京都シネマ)
3/3(金)公開
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
(原題)Everything Everywhere All at Once
2022年/米/140分
監 督:ダニエルズ
出 演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティス、ステファニー・スー
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【上映スケジュール】
3月3日~9日:12:20~、15:00~、19:50~
3月10日~16日:14:50~、17:15~、20:05~ ※終映日未定
京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
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