【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 70】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「メイド・イン・バングラデシュ」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 70】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「メイド・イン・バングラデシュ」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
5月のオススメ作品はこちら!

 メイド・イン・バングラデシュ

過酷な労働環境と低賃金にたったひとりの女性が立ち向かう物語。

2013年4月に起こった「ラナ・プラザの悲劇」(複数の縫製工場が入った複合ビルが崩壊し、1138人が死に、2500人以上の人々が負傷。)を覚えているひとはどれぐらいいるんだろう。
この事件があまりにも強烈だったのは、その被害の大きさはもとより、熾烈化する大量生産・大量消費のしくみによって生じている社会のひずみの大きさだったのではないでしょうか。
今回紹介するのは『メイド・イン・バングラデシュ』。
世界のアパレル業界を支える衣料工場で働く女性たちが、働くことの意義とみずからの権利に目覚めていく姿を丹念に描き、男性中心主義と消費社会の歪みを告発します。

23歳のシムは、その工場で厳しい環境のなか、残業代も未払いのまま働いている。
失業中の夫を養いながら、家賃の支払いにも困窮しているなか、労働者権利団体のナシマに声をかけられ、自分たち労働者の権利を学んでいく…。

「ラナ・プラザの悲劇」のあと、労働環境の改善を目指す動きがありましたが、安全で平等な労働環境には現在も至っていないことがはっきりと描かれていきます。
映画内でもシムが「1日に作るTシャツの数は1600枚だ」とナシマに言うと彼女は「そのTシャツ2枚の売値があなたの月給よ」と返すシーンがあります。
わたしたちにとって、安価な衣類を購入することは、満足感を得ることができますが、その衣類が女性たちの血と涙で濡れた服だとしたら…?
わたしたちは、確実に加害の側にいるのだとこの映画を観て、つくづく実感します。
しかし、彼女たちは仕事をすることを誇りにも思っていて、買わないという選択は彼女たちの仕事を奪うことにもつながってしまう。
では彼女たちの労働環境が良くなるにはどうしたらいいのか。
ほんとうに途方に暮れてしまいます…。
しかしこの映画を観ていて、とても勇気づけられるのは、女性を社会の犠牲者としてではなく、得た知恵をパワーに変えて交渉していくたくましさをもちあわせていることです。
とくにラスト、組合設立を国にとって阻まれそうになったシムの行動にはおもわず拍手(しかし、彼女たちの闘いはこれからが本番だという示唆も忘れずに)。
女性労働者の声を掬いあげた見事な作品でありつつ、主人公たちの衣装のまとい方、雑踏の奥行などゴージャスでカラフルな一本!必見です。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



5/6(金)公開
『メイド・イン・バングラデシュ』
(原題)Made in Bangladesh/2019/仏、他/95分
監督:ルバイヤット・ホセイン
出演:リキタ・ナンディニ・シム、ノベラ・ラフマン
©2019 – LES FILMS DE L’APRES MIDI – KHONA TALKIES – BEOFILM – MIDAS FILMES 

【上映スケジュール】
5月  6日-12日 11:45~ 
5月13日-19日 11:55~ 

※5/26終映予定
※5/20以降の上映スケジュールは京都シネマHPにてご確認ください


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