「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
11月のオススメ作品はこちら！

皮膚を売った男

自身がアート作品になった男の数奇な運命は、思わぬ結末へ。

第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートし、世界中で話題を呼んでいる『皮膚を売った男』。
シリア難民となった男が別の男と結婚し、遠い国へ渡ってしまった恋人に会うために、芸術家と悪魔のような契約を交わし、自身の背中をアート作品の場として売った男の数奇な運命を描きます。

2011年、シリア。
愛するアビールに電車のなかでプロポーズをしたサムは、思わず“これは革命だ！自由になろう！”と叫んでしまい、そのことが原因で不当逮捕されることに。
なんとかレバノンへ出国し、難民となったサムですが、アビールは外国へ渡ってしまいます。
ある日出会った世界的な芸術家ジェフリーから、大金と自由を約束する代わりに、背中にタトゥーを施し、“生けるアート作品”にならないかという申し出を受けます。
サムは、国境を越えベルギーに渡ったものの、思いもよらない出来事が次々と巻き起こり…。

本作は、現代アート作家ヴィム・デルボアが発表した“TIM”という作品がもとになっています。
映画のなかのサムと同じように、背中にタトゥーを施され、展示・売買されました。
そして死後は、背中の作品は剥がされて額に入れて飾られるという契約付き。
人々が美術館に集まってサムの背中を眺めるとき、美術館に展示されるのが予測不可能な人間となったときの美術館の対応、オークションで彼が競り落とされるとき、またサムの背中に大きな吹き出物ができてしまったときのジェフリーの慌てぶりなど、ユーモアをにじませながらこころを突いてくる演出がすばらしい。さまざまな出来事のあとに用意された皮肉なラストには思わずうなってしまうはずです。
現代アート社会の欺瞞や、難民に対する偏見を風刺しながらも、愛する人を追いかける男のラブストーリーと組み合わせることでエンターテインメント性に富んだ一作となっています。

執筆：川添結生氏（京都シネマ）

11月12日（金）公開
「皮膚を売った男」
（原題）L’Homme Qui Avait Vendu sa Peau
2020/チュニジア、他/104分
監督：カウテール・ベン・ハニア
出演：ヤヤ・マへイニ、ディア・リアン、モニカ・ベルッチ、ヴィム・デルボア
© 2020 – TANIT FILMS – CINETELEFILMS – TWENTY TWENTY VISION – KWASSA FILMS – LAIKA FILM & TELEVISION – METAFORA PRODUCTIONS – FILM I VAST – ISTIQLAL FILMS – A.R.T – VOO & BE TV

【上映スケジュール】
11月12日～18日　10:55～、13:55～、20:20～
11月19日～25日　12:05～、18:30～
11月26日～12月2日　16:10～
※最新の上映スケジュールは京都シネマHPをご確認ください

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