【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 55 】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「TOVE トーベ」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 55 】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「TOVE トーベ」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
10月のオススメ作品はこちら!

TOVE トーベ

“ムーミン”原作者トーベ・ヤンソン。自由と愛に生きた彼女の若き日々。

世界中で多くのファンを持つムーミン。
1954年に新聞でコミックの連載がはじまって以来、またたくまに世界中から愛されるようになったムーミントロールの物語は、自由について、孤独についての深い思索や、自然の恐怖や存在が分からない生き物などあらゆるものと直面しながらも受け入れるという考え方が根底にあり、2021年のいまだからこそ、あらためて触れたい物語たちです。
そんなムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの人生は、ムーミンの物語に深く反映されています。
今回紹介する『TOVE トーベ』は、彼女の若き日々を描いたエネルギッシュな一作です。

1944年、長く暗い戦争が終わったフィンランド・ヘルシンキで、画家トーベ・ヤンソンはようやく色彩を取り戻し、なかば廃墟となったアトリエを借ります。
大胆で芸術と自由を愛するトーベは、厳格な彫刻家の父との軋轢や保守的な芸術界に不満をいだき、満足のいかない日々。
既婚の政治家で知識人のアトス・ヴィルタネンとの関係は、女性の既存の社会的役割に抵抗し、自由であることの宣言でもありました。
しかし、ある時、トーベは劇場監督であるヴィヴィカ・バンドレルと出会い、激しい恋に落ちます。
そのことでアトスとの“相手を所有しない”という自由な関係は試練を迎えることに。
その上、ヴィヴィカには、夫のほかトーベ以外にも同性の恋人がいることが判明し、深く傷ついていく…。

トーベは、“Work & Love”を信条に亡くなる直前まで筆を取り、創作活動を続けました。
また、反ファシストを表明していた彼女は、第二次世界大戦中、「ガルム」誌で独裁者を批判するイラストを掲載(コソ泥となったヒトラーを片隅からムーミンが見つめています!)するなど、戦争には大反対。
平和を愛し、自由を求め、既存の価値観に抵抗し、愛すこと、愛されることを求める、とてもエネルギッシュな女性でした。
トーベを演じたアルマ・ポウスティは、そんな彼女のエネルギッシュな一面とともに知性や憂い、そしてユーモアを備えたすばらしいトーベ・ヤンソン像をみせてくれます。
自分がなにを求め、幸せであるためにはなにをするべきか。
多くを求めず足るを知ることは、一度きりの人生を歩むうえでとても強みになります。
1971年までは同性愛を違法としていたフィンランドで、同性を深く愛すること、そして保守的な芸術界で女性として成功することなど、マイノリティな立ち位置にいながらも前に進むトーベの姿には、いまの時代でも希望を見出せるはず。
「人生はすばらしい冒険よ」とトーベの言葉を思い出してしまいます。

 

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



「TOVE トーベ」
10月1日(金)公開(原題)Tove
Tove/2020/フィンランド、スウェーデン/103分
監督:ザイダ・バリルート
出演:アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、シャンティ・ロニー、ヨアンナ・ハールッティ
©2020 Helsinki -filmi Oy / Anagram Sverige AB. All rights reserved.

※上映スケジュールは京都シネマHPをご確認ください


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