【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 43】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「戦場のメリークリスマス」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 43】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「戦場のメリークリスマス」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
5月のオススメ作品はこちら!

戦場のメリークリスマス(4K修復版)


 

反骨の監督、大島渚の最大のヒット作。戦争の闇を容赦なく描く伝説の名作が蘇る!

差別や犯罪など社会の歪みや理不尽さと闘い続けた熱き映画監督、大島渚がはじめて商業映画として世界に通用する作品を目指して制作された『戦場のメリークリスマス』。
美しき存在感を放つデヴィッド・ボウイ、YMOで大人気だった坂本龍一、当時人気の絶頂にあったお笑い芸人のビートたけし。
有名俳優が集まるのとはまた違い、さまざまなジャンルのスターが一堂に会した凄みが感じられますし、当時日本では戦争映画が多く作られたものの、戦闘シーンがいっさい描かれなかったことで異彩を放つ戦争映画でもあります。
舞台は俘虜収容所。極限状態での人の内なる結びつきが繰り広げられていきます。

1942年戦時中のジャワ島、日本軍の俘虜収容所。
収容所で起こった事件をきっかけに粗暴な日本軍軍曹ハラと温厚なイギリス人捕虜ロレンスが事件処理に奔走する。
一方、ハラの上官で規律を厳格に守る収容所所長で陸軍大尉のヨノイはある日、収容所に連行されてきた反抗的で美しいイギリス人俘虜のセリアズに心を奪われてしまう…。

80年に制作されたフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』がコッポラの映画生命をかけた制作だったのと同じように、『戦場のメリークリスマス』も壮絶さを極めた制作になりました。
しかし、この映画はハプニングが味方につきます。
俳優を本業としない異例のキャスティングは、本作で絶大な効果を発揮していますが、希望した俳優たちのスケジュールが合わなかったことが発端となっているし、観客に衝撃をもたらすラストシーンのヨノイとセリアズの抱擁シーンの不思議な画面の揺れは、たまたま生み出されたものだったり。
そんな奇跡のような本作は、西欧と東洋の文化的価値観の衝突を縮図にしたような俘虜収容所を舞台に、ハラとロレンスのあいだで生まれる友情と、当時はまだまだ受け入れられていなかったヨノイとセリアズのホモソーシャルな愛情が軸で進んでいきます。
戦争の虚無や戦争の無意味さは、戦闘を描かなくてもさまざまな価値観をもつ人間によって十分描きえるものだと証明する作品でもありました。
公開から30年、戦争という記憶が遠のいている現代において、同性愛に対する見方も当時とはまた違ったように捉えることができるでしょう。
耽美的な雰囲気のなか、価値観が複雑化する今だからこそ、再評価されるゆえんなのかもしれません。
いつまでも示唆に富んだ名作であり続ける意味をぜひ劇場で体感してほしいです。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



「戦場のメリークリスマス(4K修復版)」
(原題)Merry Christmas Mr. Lawrence
5/7(金)公開 1983/日、他/123分
監督:大島渚
出演:デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし、ジャック・トンプソン、ジョニー大倉、内田裕也
©大島渚プロダクション

<上映スケジュール> 
5/7~13   11:35~ 
5/14~20 14:25~ 
5/21~27 20:20~


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/