「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
11月のオススメ作品はこちら!
30代平凡な詩人が初めて抱く静かな情熱。胸がじんわり熱くなる切ない三角関係。
韓国の名優として知られるヤン・イクチュン。主演・監督・製作・脚本を務めた『息もできない』で世界から注目され現在でも根強い人気を誇っています。
その後、菅田将暉とダブル主演を務めた『あゝ荒野』でのボクサー役などガラの悪い雰囲気が印象的ですが、今回紹介する『詩人の恋』では、そんな彼のイメージが一転。
ぽっくり膨らんだお腹でドーナツをほおばる、愛らしくもポンコツ感漂う詩人テッキを演じています。
リゾート地として知られる済州島を舞台に、詩人とその妻、そして詩人が特別な感情を抱く青年、3人の人間模様が絡み合っていく繊細な作品です。
30代後半の詩人テッキ。ほとんど収入もなく、しっかり者の妻ガンスンが家計を支えています。
普段は小学校の作文教室で詩を教え、アマチュア詩人たちと新作を発表しあうくらい。
ところが、妊娠のタイムリミットが迫ったガンスンが不妊治療を始めたことでのんきな生活が一変。
また、港にできたドーナツ屋で働く青年セユンのことが頭から離れなくなり…。
冒頭、テッキの書く詩は美しいが、「鋭さ」がないと批評されます。
彼の見ている世界は、現実世界よりも数センチほど宙に浮いているように見えます。
そんな彼に対し、妻ガンスンの言葉は現実的。
彼が愛するセユンの言葉も、貧しさのために嫌でも見なければいけない現実を示すものです。
彼らの言葉が、美しさだけの世界に引きこもっていたテッキの世界を少しずつ揺るがしていく。
この映画は、現実からすこし離れたところで、まるで子どものように生きてきた男が、今まで感じたことのない感情や言葉を心に宿したことをきっかけに、自分の気持ちや自分が知らないところで周りのひとが抱えていた悲しさと向き合って、新しい現実に足を踏み入れていく。
そんなすこし不甲斐ない男の成長物語なのです。
小学生に詩人になるにはどうしたらいいかと問われ、「詩人は代わりに泣いてあげられる人 悲しみを抱えきれない人のために」とテッキが答えるシーンがあります。
優しさのなかには悲しみが、悲しみには美しさが備わっている。
全編にわたってそんなことを語りかけてくる。繊細で美しい作品となっています。
執筆:川添結生氏(京都シネマ)
詩人の恋
(原題)시인의 사랑
11月13日公開
PG12/2017/韓/110分
監督:キム・ヤンヒ
出演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラム
© 2017 CJ CGV Co., Ltd., JIN PICTURES, MIIN PICTURES All Rights Reserved
HP:https://shijin.espace-sarou.com/
【上映スケジュール】
11月13日~19日 11:35~、20:15~
11月20日~26日 17:30~
※12月3日終了
京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
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