「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
7月のオススメ作品はこちら!
アッパークラスの主婦たちの熾烈なマウンティング合戦を描いた華麗な社会派ドラマ。
近年、女性の連帯を描いた映画が数多く登場しています。
世界中で愛される不朽の名作を映画化した『ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語』やバージョンアップを繰り返してきた『チャーリーズ・エンジェル』、TV局を揺るがしたセクハラ訴訟の全貌を描いた『スキャンダル』などがあります。
そんななか、1980年代にメキシコを襲った歴史的経済危機を背景にそれによって炙り出されたセレブ妻たちの脆い世界とマウンティングを描いた『グッド・ワイフ』を紹介します。
1982年のメキシコシティの高級地区ラスロマスが舞台です。
実業家の夫フェルナンドと3人の子どもに恵まれた主人公ソフィアは、周囲の人間に“彼女のようになりたい”と思わせる洗練されたヘアスタイルやドレスといった身だしなみや趣味の良さで身を固め、アッパークラス主婦たちのコミュニティに女王のごとく君臨しています。
しかし、1970年代石油投資ブームを経て膨らんだ対外債務が原因となり、1982年、深刻な債務危機が到来し、ソフィアの完璧な世界も崩れ始めていきます。
ソフィアは、冒頭の誕生日パーティーで、豪華なジュエリーを身につけ肩パッド入りドレスを着こなし、人々から向けられる視線を気持ちよさそうに受けています。
80年代の肩パッドといえば、ビジネスウーマンの代名詞であった“パワージャケット”です。
女性の社会進出が革新的に進んだこの時代、自分で稼ぐことや社会的地位を築いていこうとする女性たちが自身を奮い立たせるための戦闘服でした。
一方、ソフィアのドレスは、裕福な男性のよき妻となることが人生において重要であること、そして小さな世界で女王に君臨することを表し、パワージャケットとはまったく別の意味の権威の象徴として登場させていて、皮肉めいたものを感じさせます。
アレハンドラ・マルケス・アベヤ監督の抱く、男女平等をめぐり女性たちが勝ち取ってきた戦いの多くが上流階級出身の夫に依存する女性たちによって阻まれてきたという批判的な思いがひしひしと感じられる全編となっています。
富に依存してきた女性が、それらを失ったとき、はたして彼女には何が残り、そして何に気づいていくのでしょう…。
執筆:川添結生氏(京都シネマ)
グッド・ワイフ
7/10(金)公開
(原題)Las Niñas Bien
2018/メキシコ/100分
監督:アレハンドラ・マルケス・アベラ
出演:イルセ・サラス、カサンドラ・シアンゲロッティ、パウリーナ・ガイタン
©D.R. ESTEBAN CORP S.A. DE C.V.,MEXICO 2018
配給:ミモザフィルムズ
公式HP:http://goodwife-movie.com/
【上映スケジュール】
7月10日~16日:10時10分~、15時50分~
7月17日~23日:15時5分~、17時10分~
7月24日以降未定、7月30日終了予定
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