「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
10月のオススメ作品はこちら!
ドリーミング村上春樹
村上春樹の翻訳家メッテ・ホルム、完璧をもとめてパラレルワールドを旅する。
村上春樹は日本の現代作家で最も翻訳されている作家です。その数は世界50言語に及んでいます。
メッテ・ホルムは1995年に『ノルウェイの森』と出会って以来、20年以上、村上春樹の作品をデンマーク語に翻訳してきました。
その功績もあり、村上春樹は2016年に栄誉あるハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞します。
映画は、オーデンセで行われた授賞式のあと、王立図書館でメッテが村上春樹と対談する瞬間までと、同時期に『風の歌を聴け』の翻訳をしていたメッテの姿を捉えています。
これは村上春樹作家活動40周年に贈る特別なドキュメンタリーです。
映画の中で新鋭監督のニテーシュ・アンジャーンは、メッテを追うカメラアイに加え『かえるくん、東京を救う』の主人公の一人である、CGのかえるくんの視点を投入します。
メッテの気持ちを代弁するように、「かえるくん」は作中に小説の一文を読み上げます。
“完璧な文章などというものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね”。
村上春樹の世界に近づくため日本を訪れたメッテを追うカメラは次第に小説に登場する風景を描写していきます。
深夜のデニーズ。バーカウンター。古いレコード。ピンボール。地下鉄。首都高速道路。公園の滑り台。
そして、夜空に浮かぶ二つの月。
そう、それは文庫本を片手に私たち自身がかつて辿った同じ道です。
そこにあるのは非常にプライベートではあるものの作家と読者による親密な同行者としての、連帯感です。
それは読書の楽しみのほとんどすべてと言ってもいいかもしれません。
そして村上春樹のヴォイスは私たちを遠く、まだ見たことのない場所まで運んでくれるのです。
この映画はスポットライトの当たりづらい翻訳家という部分にあえて光をあてることで偉大な作家の作品と、その作品世界の味わいをより深くしています。
あなたもきっと魅了されることでしょう。
執筆:谷口正樹氏(京都シネマ副支配人)
「ドリーミング村上春樹 」
原題:Dreaming Murakami
2017/デンマーク/59分/
監督:ニテーシュ・アンジャーン
ⓒFinal Cut for Real
公式HP:https://www.sunny-film.com/dreamingmurakami
【上映スケジュール】
10月19日~25日 9:40~、13:40~、20:50~
10月26日~11月1日 11:50~、19:00~
11月15日上映終了、11月2日以降の時間未定
※詳細は京都シネマHPでご確認ください
京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/