【ことしるべ美術クラブ スタッフおススメのアートスポット!vol.136】笠岡市立竹喬美術館「新収蔵 猪原大華と岩倉壽」

【ことしるべ美術クラブ スタッフおススメのアートスポット!vol.136】笠岡市立竹喬美術館「新収蔵 猪原大華と岩倉壽」

新収蔵
猪原大華と岩倉壽

猪原大華(本名:壽)は明治30(1897)年広島県深安郡神辺町(現福山市)に生まれ、大正7年に金島桂華の勧めで京都市立絵画専門学校に入学します。
土田麦僊に師事し、その後西村五雲の塾に入り、昭和13年に五雲が亡くなってからは、山口華楊らと晨鳥社を結成します。
戦後は自然をより深く見つめ、造形の奥にある存在感を描き出すような画風を展開しました。

岩倉壽は昭和11(1936)年香川県三豊郡山本町(現三豊市)に生まれ、昭和30年京都市立美術大学美術学部日本画科に進学しました。
そこで、当時講師であった大華に出会います。在学中に第1回新日展で初入選し、卒業後には晨鳥社に加わります。
昭和47年に第4回改組日展で《柳図》が特選となるなど、日展を中心に活躍し、平成30年に亡くなられました。

大華と岩倉、偶然にも同じ名前の二人の作品を見比べると、共鳴する魅力があることに気づきます。
岩倉は大華を敬愛しており、大華没後の個展に寄せたコメントで「対象を深く凝視し、自分自身の心の奥を確認しながら、一筆一筆進められた先生のお姿が作品の裏から、しみじみと伝わって来ます」と記しています。
それは同じように対象に誠実に向き合う、岩倉自身の姿勢とも共通しています。


猪原大華《部屋の花》竹喬美術館所蔵



このたび竹喬美術館に大華作品9点、岩倉の日展出品作を含む17点の作品が寄贈されました。
特に大華の昭和47年の第25回晨鳥社展に出品した《部屋の花》は、野の花の強さと瑞々しさとともに、どこか温かいなつかしさを感じさせる作品です。
また岩倉の平成21年第41回日展の《比叡遠望》は、岩倉の自宅から見える比叡山を窓の外に望む構図です。白昼夢のように優しく、穏やかで純粋な世界が画面の中に広がっています。
愚直なまでに画道を全うした二人の作品は、これまで二人展として紹介されたことはありませんでした。
二人の作家が紡ぐ、心地よい自然の中で心を遊ばせてみませんか。


岩倉壽《比叡遠望》竹喬美術館所蔵
 

今回、ことしるべ読者に、本展担当学芸よりコメントを頂戴しましたので、紹介します。

” 猪原大華と岩倉壽の作品には、対象を深く凝視し、心の奥に留めたものを描くという、共通する姿勢があります。
生前、愚直なまでに画道を全うした二人は、画壇の中では目立たない存在であったといえますが、その作品は色褪せない魅力を持ち、見るほどに私達を心地よい自然の中へ誘ってくれます。
竹喬美術館では平成22年に現代の京都画壇を紹介する中で、岩倉壽展を開催し、作品を紹介してきました。
このたび新しくご寄贈いただいた岩倉壽の作品は、日展出品作をはじめとして、大画面で見ごたえのある作品が揃っています。
奇しくも展示の最終日10月11日は岩倉壽の三回忌の命日にあたります。
祈りにも似た静謐な画面から、作者の人柄が偲ばれます "

ぜひ、今回の二人展をお楽しみください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
関連イベント情報

●学芸員によるギャラリートーク  8月30日(日)、9月20日(日) 13:30~14:30
●講座「凝視から表象へ -二人の壽-」 講師:上薗四郎(当館顧問) 9月27日(日)13:30~15:00

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆ 新収蔵 猪原大華と岩倉壽 ◆

●会期:2021年8月29日(土)~10月11日(日)
●会場:笠岡市立竹喬美術館(岡山県笠岡市六番町1-17)
●問い合わせ:  ℡ 0865-63-3967
●主催:笠岡市立竹喬美術館
●開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
●休館日:月曜日休館(ただし、921日(祝・月)は開館し、23日(水)は休館します)
●入館料:一般500400)円 高校生以下は無料(学生証をご提示してください)  
 ※( )内は団体20名以上 ※65歳以上は無料(年齢のわかるものをご提示ください)

HP:http://www.city.kasaoka.okayama.jp/site/museum/ 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★過去の竹喬美術館の展覧会紹介はコチラ
笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その1
笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その2
笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その3
笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その4