田村仁美展— インサイダウトⅡ —
画家である田村仁美氏の個展がギャラリー恵風2Fで開催中です。
会場を訪問し、田村氏にお話をお聞きしました。
[ことしるべ]でご紹介するのは、今回が初めて。漆芸家・井上絵美子氏の個展でお会いしたご縁で取材させていただくことになりました。
井上氏とは京都市立芸術大学の同級生とのこと。
田村仁美氏
――今回はどのようなテーマの個展でしょうか?
田村:タイトルの「インサイダウト」は造語です。このタイトルで個展を開催するのは2回目です。
ものの本質は、インサイドでもアウトサイドでもなく、その境目にあると思います。
ものの境目が最もそのものらしいという意味を込めて制作しました。
――さまざまな画材を組み合わされているように見えます。何を使用されているのでしょう?
田村:鉛筆や水彩の色鉛筆などで描いています。
気持ちの強弱を表現しやすかったり、紙に芯の先が引っかかったりするところに魅力を感じています。
右上の上下の黒い部分は、紙の表面をニードルで削って鉛筆の粉をかけました。
水彩は小学生でも簡単に描けますが、やり直しがききません。そこが好きです。
――では、下描きはしないんですか?
田村:はい、しません。一発描きです。「こう描こう」と構成は決めずに、描いていきます。
実は、このうさぎもスケッチはしていないんです。実物や図鑑をじーっと観察はしますが、頭の中のイメージで描きます。
そうすることで、フレッシュさや危うさ、植物や動物の生命感を表現できると考えているからです。
――たくさんのモチーフが描かれていますが、前後がなく混ざり合っている感じがしますね。
田村:「何を主役にして、何を脇役にする」とは考えていません。色も線も同一と捉えています。
自宅近くで、何もいないけれど獣道があったり、何かがいた気配を感じたりすることがあります。
そのようにひっそりと生きているものを描きたいと思っています。
――コロナ禍で心境の変化はありましたか。
田村:「あー、絵が描けてよかった!」と思いました。
絵を描きながら、「さまざまな生きものそれぞれがギリギリで存在していて、お互いに上手くやっていれば大丈夫」
という気持ちになりました。
●田村仁美展— インサイダウトⅡ —
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