【ことしるべ美術クラブ スタッフおススメのアートスポット Vol.80】笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その3

【ことしるべ美術クラブ スタッフおススメのアートスポット Vol.80】笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その3

生誕130年記念 小野竹喬のすべて その3

第一章「模索の時代」のみどころ  


国画創作協会の設立へ
大正初期の竹喬は、東西絵画からさまざまな表現を受容して、新鮮な日本画を創造しようとしました。
しかしその試みは、国が主催する文部省美術展覧会(文展)では充分に理解されているとはいえない状況でした。


1916年 《島二作(早春・冬の丘)》 笠岡市立竹喬美術館

第10回文展で特選となったこの作品は、東西絵画学習の一つの成果といえ、セザンヌの構築的な構図と青・緑・朱の鮮やかな色彩表現に南画の情趣を融合しています。
 


1918年 国画創作協会の創立を記念して 前列中央が竹喬

竹喬は《島二作》のあと、翌年の文展にセザンヌ風をさらに推し進めた意欲作《郷土風景》を出品しますが、落選となり審査基準に不信感を持つようになります。
この出来事を契機として、同じような不満を持った仲間と、自由な芸術を創造するという目的で国画創作協会を創立し、自分たちの公募展を始めます。

 

波切村 右隻
波切村 左隻
1918年 《波切村》 笠岡市立竹喬美術館

竹喬が仲間と創立した国画創作協会の第1回展に出品された作品です。自由な芸術の創造に燃える青年期の竹喬の意気込みがみなぎっています。

 



1921年 《ギザ郊外》 個人蔵

竹喬は自らの作品に西欧絵画からの影響が大きくなるほど、実際に作品を見たいという思いが強くなり1921年に渡欧します。
この作品は神戸港からマルセイユまでの船旅の途中に立ち寄ったエジプトの風景を描いた珍しい作品です。

 


1926年 八瀬村頭 笠岡市立竹喬美術館

渡欧を経て竹喬は、日本画独自の表現を模索するようになり、線描や淡彩での表現を試しています。この作品では線の集合で立体感を表現しようとしました。

 

線を主体とした作品は1928年の《冬日帖》で一つの成果を示し、さらに作者の精神性を重視する文人画を意識して、1930年の《山海行吟帖》などを生み出します。しかしこの試みは長くは続かず、自然をありのままに描き出そうとする竹喬は、次第に色の表現へと戻っていきます。
青年期の「模索の時代」があってこそ「第二章 至純の時代」の明朗で清澄な表現へつながっています。
 

●生誕130年記念 小野竹喬のすべて
◆会期:第一章「模索の時代 1889-1938」 7月6日(土)~9月1日(日)まで
    第二章「至純の時代 1939-1979」 9月7日(土)~11月24日(日)まで
◆会場:笠岡市立竹喬美術館
◆住所:岡山県笠岡市六番町1-17 (Tel:0865-63-3967)
◆HP:http://www.city.kasaoka.okayama.jp/site/museum/
◆開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
◆休館日:月曜日休館(月曜が祝日の場合は翌日)、9月2日(月)から6日(金)
◆主催:笠岡市立竹喬美術館
◆共催:山陽新聞社
◆入館料:一般800(650)円
 ※( )内は団体20名以上 高校生以下は無料(学生証をご提示ください)
   ※笠岡市内在住の65歳以上は無料、笠岡市外在住の65歳以上は団体料金(住所年齢のわかるものをご提示ください)
   ※前売は一般個人のみ600円 
      セブンチケット(第一章:076-439、第二章:076-440)、ローソンチケット(Lコード:63159)、チケットぴあ(Pコード 第一章:769-780、第二章:769-781)

笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その1

笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その2

笠岡市立竹喬美術館「生誕130年記念 小野竹喬のすべて」展 その3