【オススメのアートスポット紹介!Vol.19】ライカギャラリー京都「スナップ撮影の名手 木村伊兵衛」

【オススメのアートスポット紹介!Vol.19】ライカギャラリー京都「スナップ撮影の名手 木村伊兵衛」

報道写真はもちろん、いつの時代もフォトグラファーの憧れの名機として時代を切り取ってきたライカ。
戦前・戦後に活躍し、日本の写真史の先駆者としてその名を刻む木村伊兵衛もライカに魅せられた一人でした。
日本国内で2か所目となるライカギャラリー京都(ライカ京都店2階)では、10月4日(木)まで写真展「スナップ撮影の名手 木村伊兵衛」を開催しています。
木村伊兵衛の助手として活動し、独立後には約20年に渡り、プロ写真家の団体である日本写真家協会会長も務めた田沼武能氏により選び出された珠玉の作品15点をぜひご覧ください。


© Ihei Kimura

セルフポートレート。よく見ると、ピントが合っているのは・・・。

 

6月30日(土)には田沼武能氏によるギャラリートークも開催されました。
一番近くにいた弟子だから知る木村伊兵衛のエピソードの数々やその人柄など、貴重なお話をたくさん聞くことができました。

―木村伊兵衛との出会い

私は実家が写真館で、偶然に入社した写真通信社に木村伊兵衛が所属していたんです。私が入社したタイミングで、それまでの木村の助手が離れることになったので、助手にしてほしいとお願いしました。何度も断られましたが、最後には押しかけのようなかたちで助手になりました。本当に厳しい人で、弟子を褒めるということはありませんでした。木村からはよく「俺と同じことをしても俺よりはうまくならない。必用なことだけを盗んで自分流の仕事をしろ」と言われていました。

―木村伊兵衛とライカとの出会い

1929年にドイツの飛行船ツェッペリン号のエッケナー船長が首から下げているカメラを見て、自分の撮影スタイルにぴったりだと思い、その翌年にライカA型を入手したそうです。それまでのカメラといえば、三脚を立てて定位置で撮影するものが主流でしたから、ライカの持つ機動性とそこから生まれるアングルの多様性に大変な魅力を感じたのではないでしょうか。

―木村伊兵衛が撮影したかったもの

木村の写真について話すとき、まずはじめに思い浮かぶのは下町を主題にしたものではないでしょうか。木村は演出する写真が嫌いでした。幼少期から慣れ親しんだ、下町という生活が路上に露出した空間でこそ、木村の求める“人間の生きる姿”を写し出すことができたのだと思います。撮影当初は、どこにでもある下町の一場面だった風景。それがいつしか時代が進むとともにいかにその写真が時代を象徴した一コマであったかが浮かび上がってくる。今尚、木村の写真の魅力が衰えない大きな理由の一つです。

木村は1954年にパリでアンリ・カルティエ=ブレッソンを訪ね、そこでロベール・ドアノーを紹介されました。ドアノーは終生、パリの下町に溶け込んでそこに暮らす人々の営みを撮影した写真家です。ドアノーとパリの下町を数日間撮影したあとの木村の作品はそれまでのものとは雲泥の差です。自分の撮り続けてきた“人間の生きる姿”という主題に対して、自信を深めたのではないでしょうか。

―最後に来場者にひとこと

木村はアマチュアカメラマンには甘いんです。よくほめる。だけど、写真を生業にするプロのフォトグラファーにはめっぽう厳しい。ほめないし、お世辞も一切言わない人で、私もほめられたことは一度もありません。ただ、私の写真集が発売されることを木村に報告に行ったあと、私の後に助手になった後輩に「田沼が良い写真を撮っているから見せてもらえ」と言っていたそうです。それが木村伊兵衛という人でした。

木村伊兵衛の撮影方法は言うなれば「居合撮り写真術」。目的を決めずに町に出かけ、よい被写体を発見するとその人物の動きや背景の状況まで瞬時に判断してサッと構えてシャッターを押し、終わると元に戻す。その早業が剣道の居合術に通じると思い私が命名しました。

今回の写真展を通して、みなさんにはそれぞれの写真に写し出された人間の感情やその時代にしか撮影できない木村伊兵衛の「こころ」を見てほしいと思います。



● スナップ撮影の名手 木村伊兵衛

期 間:2018年6月30日(土) - 10月4日(木)
会 場:ライカギャラリー京都 (ライカ京都店2F)京都市東山区祇園町南側570-120   
           Tel. 075-532-0320
    HP  http://www.leica-camera.co.jp
時 間:午前11時 ~ 午後7時  月曜休館 
料 金:無料