現在開催中の「ニッポン×ビジュツ展」も閉幕まであと10日あまり―。
本展では、東京富士美術館が所蔵する3万点のコレクションの中から、葛飾北斎、歌川広重、 伊藤若冲、 円山応挙、 鈴木其一などの絵画、浮世絵版画や、 重要文化財に指定されている太刀《銘 備前國長船住近景》、 島津斉彬所用の武具甲冑など日本美術の名品40点を展観。 日本文化が華やかに咲き乱れた江戸時代の名品を中心に「カワイイ」「サムライ」「デザイン」「黄金」「四季」「富士山」といった日本美術を楽しむうえで欠かせない6つのキーワードを通して、ニッポンのビジュツをひも解いています。
今日から6回に分けて、各章のイチ押し作品と日本美術の面白さについて解説していきます。
《第1章》
キモカワ×日本美術
伊藤若冲 《象図》寛政2年(1790) 東京富士美術館蔵
日本美術に登場するモチーフは、現代の私たちから見ると、 ときに大変かわいく思われます。 たとえば、円山応挙の描く犬や、 長澤蘆雪の描くウサギは愛おしさを感じさせるカワイイ魅力を放っています。
一方、曾我蕭白の描く仙人、 東洲斎写楽の描く人物などは、 デフォルメが強く、 気持ち悪さや不気味さを持ちながらも、 それゆえに可愛らしく感じられる、今でいう「キモカワ」的な印象を受けるかもしれません。
「カワイイ」「キモカワ」の持つ多義的な魅力は、日本美術の特徴の一つともいえるかもしれません。