果てしのない行為に驚き―「吉村芳生 超絶技巧を超えて」監修・冨田章氏

美術館「えき」KYOTOで開催中の「吉村芳生 超絶技巧を超えて」を監修した、東京ステーションギャラリー館長の冨田章さんから読者のみなさんへメッセージをいただきましたのでご紹介します。

吉村芳生の作品は、写真と見紛(まが)うほど超リアルですが、それは彼が飛び切りいい眼を持っていたためでも、卓越したデッサン力を持っていたためでもありません。対象を細かな部分に分解し、そのひとつずつを、ひたすら忠実に写していった結果です。それは2.5ミリ四方のマス目に分解した対象を、ひとマスずつ写し取っていくような細かい方法です。それ自体は単純作業ですが、何万個というマス目を写すのは苦行以外の何物でもありません。
吉村芳生の作品は、時には何か月もかかるような膨大な作業の果てに生み出されます。私たちは、まさにその果てしのない行為自体に、驚きと感動を覚えます。ぜひ会場で、作品に近づいたり離れたりしながら、その魅力を存分に味わっていただきたいです。


≪コスモス(絶筆)≫2013年、色鉛筆/紙

*本稿は2019年5月25日(土曜日)付け京都新聞夕刊に掲載したものです


「吉村芳生 超絶技巧を超えて」は6月2日まで美術館「えき」KYOTOで開催中です。