【注目の1枚】
スノードン山、残照 1798−99年
J・M・W・ターナー《スノードン山、残照》1798−99年 水彩、スクレイピングアウト・紙 エディンバラ、スコットランド国立美術館群 ©Trustees of the National Galleries of Scotland
ウェールズ地方のスノードン山の、夏の夕暮れの情景を描いています。
夕闇の中に山や木々の姿が沈んでいこうとする前のひとときを、ターナー(1775-1851)はこんな美しい作品に残してくれました。
どこか遠くから、鳥の声が聞こえてくるようです。
ターナーはこのとき20歳台前半、夏になるとスケッチ旅行に出かけるのがすでに恒例になっていましたが、ひときわスケールの大きな景観を目の当たりにしたこのときの経験は大きかったようで、この時代の芸術で重要視されていた「崇高」(人知を超える自然の壮大さや荒々しさ)の概念に対して、この旅を契機に意識的になったということです。
また、この地は風景画家リチャード・ウィルソン(1714-1782)の生誕の地でもありました。
ウィルソンはターナーやコンスタブルたちにも大きな影響を与えた先駆的な画家でしたが、不遇な晩年を過ごして亡くなった人物だそうです。
【3月20日(火) 京都新聞広告より】