開催期間:2023年3月14日(火)~2023年5月21日(日)
住友コレクションの一角を占める近代洋画は、住友吉左衞門友純(春翠)が明治30年(1897)の欧米視察中のパリで印象派の画家モネの油彩画2点を入手した事に始まります。その一方で、同時代のジャン=ポール・ローランスなどフランス・アカデミーの古典派絵画も収集しました。19世紀末のフランス絵画は、印象派の台頭とともに古典的写実派が次第に衰退していく様相を示すことになりますが、春翠が収集した洋画コレクションには同時代の印象派と古典派の作品がともに揃って収集されているところに特徴があります。また、明治維新以降の日本において、住友洋画コレクションは他に先駆けた最初の本格的な洋画コレクションでもありました。本展は、光を追い求めた印象派と陰影表現による実在感を追究した古典派を「光陰」と捉え、この「光陰」二つの流れから滋養を受けて展開した近代洋画の数々を紹介するものです。
本展のみどころ
1⃣ 19世紀フランス絵画の光と陰 -印象派のモネと古典派ローランスの対決 2⃣ 初期文展の花形作家たちの代表作がずらり! -藤島武二、和田英作、岡田三郎助、山下新太郎、ほか 3⃣ 明治の知られざる画家、河久保正名や田村直一郎らの逸品を初公開 |
§1:光と影の時代ー印象派と古典派 |
住友春翠の洋画コレクションの特色は、クロード・モネの2点の風景画をはじめとする印象派の作品と、それとは趣を異とする19世紀フランス・アカデミズムの写実表現を根幹とする古典派絵画が共に収められていることです。その作品収集に深く関わったのが洋画家・鹿子木孟郎(かのこぎたけしろう)(1874~1941)です。明治30年代に渡欧した鹿子木の留学資金を支援する代わりとして、住友は鹿子木に西洋絵画の収集を依頼。パリで、アカデミズムの巨匠ジャン=ポール・ローランスの特別な弟子となった鹿子木は、ローランス作《ルターとその弟子たち》(第二次大戦中に焼失)をはじめ《マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち》などの代表作を春翠のもとに届けています。鹿子木が仲介して集められた本場の西洋画には、他にフランス外光派や英国ロイヤル・アカデミーの画家たちの作品もあり、それらは明治36年に完成した須磨別邸の各部屋に飾られました。
クロード・モネ《モンソー公園》 1876年(泉屋博古館東京蔵)
ジャン=ポール・ローランス《マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち》 1877年(泉屋博古館東京蔵)
クロード・モネ《サン=シメオン農場の道》 1864年(泉屋博古館東京蔵)
§2:関西美術院と太平洋画会の画家たち |
前章で紹介した鹿子木孟郎が修得したのは、19世紀フランス古典派絵画の写実表現でした。留学中の鹿子木の鍛錬は、サロンに入選した《ノルマンディーの浜》に結実しています。帰国後、関西美術院や太平洋画会、文展(文部省美術展覧会)でも中心的存在となった鹿子木は、それらの展覧会出品作から春翠好みの洋画を仲介したり、また春翠が支援した関西美術院の院長だった浅井忠の遺作を住友に届けています。太平洋画会は、浅井らを中心に明治20年代初期に創立された明治美術会を母体として明治34年(1901)に発足した美術団体。当初は鹿子木らが移入したアカデミックな写実画の牙城として、§3で紹介する白馬会系の外光表現と対照され、明治後期の洋画界における二大潮流を形成していました。この章では、関西美術院を牽引した浅井や鹿子木の作品を中心に、明治美術会やその後の太平洋画会の系統を汲み、明治末の文展などで活躍した画家たちを紹介します。
浅井忠《河畔洋館》 1902年(泉屋博古館東京蔵)
鹿子木孟郞《ノルマンディーの浜》 1907年(泉屋博古館東京寄託)
河久保正名《海岸燈台之図》 1902年(泉屋博古館東京蔵)
特集展示「初公開! 田村直一郎の凸凹絵画」 |
田村直一郎(たむら・なおいちろう)という画家については、生没年はもとより、師承関係や画歴など今のところ確たる記録は見当たらない。いずれも点景人物のいる風景画だが、作風は共通して油絵具をモチーフに沿ってネチャネチャと細かく盛り上げた、いわゆる厚塗り技法によっている。油彩による点描法が日本で使われ始めるのが明治40年代前半のことを考えると、この厚塗り技法はそれに先行するものとして注目すべきものであろう。住友春翠は田村の作品を計7件同時期に購入しており、須磨別邸の広間に掛けていた。
田村直一郎《武甲山入口夕陽》 1905年(泉屋博古館東京蔵)
§3:東京美術学校と官展の画家たち |
「近代洋画の父」と呼ばれた黒田清輝は、明治中期のフランス留学中にラファエル・コランに学んだ外光表現を日本に将来しました。明治26年(1893)に帰国した黒田は、外光表現の発表の場として「白馬会」を新たに結成し、また東京美術学校西洋画科の教諭となります。この黒田に師事し、後に同校教授となった藤島武二もまた、明治末にフランスに留学して古典的写実からポスト印象派まで幅広く学びました。東京美術学校で黒田や藤島に学んだ和田英作や岡田三郎助らは、明治30年代の白馬会を主な発表の舞台として外光表現を展開して、前章で紹介した明治美術会や太平洋画会の写実表現とは異なる新風を画壇に吹き込みました。彼らは、やはりフランス留学を経験して明治末に始まる文展でも受賞を重ね、一世を風靡しました。この章では、白馬会や文展で活躍した画家たちを紹介します。
藤島武二《幸ある朝》 1908年(泉屋博古館東京蔵)
山下新太郎《読書の後》 1908年(泉屋博古館東京蔵)
和田英作《こだま》 1903年(泉屋博古館東京蔵)
関連イベント
~特別記念講演会「住友洋画コレクションの特質」~
~スライド・レクチャー「詳しすぎる作品解説」~
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☆★☆★☆2023年3月12日付京都新聞朝刊に掲載された特集紙面はコチラでもご覧いただけます!!
開催期間 | 2023年3月14日(火)~2023年5月21日(日) |
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時間 | 午前10時 ~ 午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日、4月25日(火) |
会場 | 泉屋博古館 京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町24 |
ホームページ | https://sen-oku.or.jp/program/2023_kouinraisan/ |
料金 | 一般800円、高大生600円、中学生以下無料 ※20名以上は団体割引20%、障がい者手帳ご呈示の方は介添者1名まで無料 ※本展覧会の入場料で青銅器館もご覧いただけます |
お問い合わせ | 泉屋博古館 電話:075-771-6411(代) |
主催/後援など | 主催:泉屋博古館、日本経済新聞社、京都新聞 後援:京都市、京都市教育委員会、京都市内博物館施設連絡協議会、公益社団法人京都市観光協会、NHK京都放送局 |
備考 | ※新型コロナウイルス感染症予防・拡散防止のため、予定を変更・中止する場合がございます。同館HP、Twitter、Facebook等で最新情報をご確認ください。 |