カブや花、鯉など身近なモチーフの中に“奥深い美意識”や“静かな感動”を込めて描いた画家・徳岡神泉に焦点を当てた展覧会「徳岡神泉―深遠なる精神世界―」を、京都府立堂本印象美術館で開催中です。
徳岡神泉を紹介する展示は、京都では1996年に京都国立近代美術館で開催されて以来、20年ぶりの開催となります。
でも、徳岡神泉っていったいどんな画家?
ここでは、11月3日(土・祝)に開催された講演会「徳岡神泉が求めたもの」(講師:堂本印象美術館主任学芸員 山田由希代氏)の内容をもとに、徳岡神泉についてご紹介します。
~神泉の描いた世界~
昭和25年の《鯉》は、2匹の鯉と濃厚に塗りこめられた背景が絶妙なニュアンスを醸し出しています。
写実と内観、そして装飾性が融合した表現によって、対象物だけではない、周りの空気・自然・宇宙までをも内包するような、象徴的な空間が生み出されるようになったのです。
これ以降、刈り取られた稲の光と影の関係が美しい《刈田》や、
ただ一つの蕪を描きつつも目に見えない大自然・大宇宙をも表現した《蕪》など数々の代表作が描かれました。
長く苦しい青年時代を経験した神泉。
だからこそ、物事を深く、深く見つめて熟考し、内在する精神世界をも描き出す独自の“神泉芸術”が完成したのです。
神泉の作品は、自然界のあらゆる事象をじっくり見つめることの豊かさを私たちに教えてくれます。
“分かりやすさ”“スピーディさ”が求める現代だからこそ、神泉の作品に触れ、その精神世界を感じてみてください。