【連載】「色織」緑の一巻 上 (作・千坂尚義)

(2024、和紙、日本画画材、表装道具)

 

 

昼の青と夜の紺が出会う赤で空が焼けている。
金色の稲穂が色づく田んぼ道、「マヨセン」の四文字が入った旗をなびかせて、青年は一人のんきな歌を口ずさむ。

 

 

ここは緑の国の北部、若草村。田舎の村だが人や動物の活気あふれる心豊かな村だ。
青年の名は式彩紡(しきさいつむぐ)。ぼろい借家で「マヨセン」を営むが、最近やったのはゴキブリ退治やハチの巣駆除なんて本職から離れたしごとばかりで貧乏暮らし。
夜と朝が入れ替わり、今日も依頼を待っていると、一人のお客がやってきた。

 

 

依頼人の四つ葉はパン屋で働く若い女。ノリのいい関西弁で見せられた怪文書には、
「今日の午後七時、ダルマ村のきゅうりを全ていただく」
という河童からの脅迫が書かれていた!

 

 

 

書、絵、物語、表装=千坂尚義
「色織」緑の一巻 下巻へ続く

 


 

●作者:千坂尚義(ちさか・ひさよし)
1994 京都府宮津市に生まれる
2017 石本正日本画大賞展 大賞(浜田市立石正美術館/島根)
2021 成安造形大学美術領域日本画コース卒業
2022 個展(Social Kitchen 2F/京都)
2023 いい芽 ふくら芽 in TOKYO 八犬堂ギャラリー賞(大丸東京店)
   個展(ATELIER MAY/京都)
2024 BIG-i×Bunkamuraアートプロジェクト 上田バロン賞(Bunkamura Gallery 8/東京)
2025 「京都 日本画新展」奨励賞・京都商工会議所会頭賞

 

「色織」
日本の”アニミズム”を軸に展開する絵巻作品。
絵や物語のみならず、絵巻に使用されている和紙・表装まで本人の手によるもの。