【開催報告】審査委員によるギャラリートークを開催(2)

【開催報告】審査委員によるギャラリートークを開催(2)

1月29日(水)14時から展覧会場内で、本展審査委員によるギャラリートークを開催しました。
今回、お話しいただいたのは、審査委員を務める美術評論家の太田垣實氏。
受賞作品を中心に解説いただきました。

「京都 日本画新展」は2008年度から始まり、名称の変遷を経て通算で12回目の展覧会。
京都の若手日本画家による新人賞の意味合いを込めた展覧会です。


太田垣氏によると、
昨年11月に行われた審査会では、審査委員それぞれに意見があり、かなり議論して受賞作を決めた。

 


大賞受賞の監物紗羅さんの「心の音」は、ざわついたり不安になったりする気持ちを表現したそう。
そういった心の流れのような抽象的なものと、鳥などの具象的なものとの構成の良さが高い評価を得た。


白象を描いた池上真紀さんの「幽幻」については、全体に少しもやっと描かれているオーラのようなものが、深いものを見る人に与える。絵の完成度、テクニックとともに、日本画では精神性が大事にされるが、この絵にはそれがある。


清水葉月さんの「間戸」は一見抽象的な構成だが、線の使い方がうまい。これも日本画では大事にされてきた要素で、塗るのではなく線を描くということができている点が評価された。
昨年出品された作品よりも空間の使い方がよい。西洋絵画は塗って空間を埋めてしまうが、日本画で大事にされる余白、空間のバランスがうまく表現され、空気の流れのようなものを感じられる。絵が広がって見える。


阿部瑞樹さんの「ゆらめくみち」は、絵の構成として抽象的ではあるが、かなり細かな描写が具象性を帯びていて、さわやかな画面に仕上げられている。


山本雄教さんの「White noise」は筆圧の加減で表現された作品で、審査委員の中では現代アートだという指摘もあった。
しかし「日本画“新”展」の審査委員として、この作品に賞を贈ることに大きなメッセージ・意味があるのではないか、という考えに至った。
森萌衣さんの「追慕」は室内にいる女性を描いたロマンティックな作品。
若い女性画家が女性を描くことが最近多い。これまでの美人画とは異なる新しい風潮が感じられる。

峯石まどかさんの「くじゃく」は、鳥の羽が無数の手で描かれていて、江戸期のだまし絵のような印象も受ける。もう少し構図に工夫がほしかった。
田中翔子さんの「Jardinet~萩の詩~」は、弱そうな画面に見えるがよく見ていると綺麗に描かれている。萩とかコスモスとか秋の七草を描くのは、日本画のモチーフとして重要なもの。
今岡一穂さんの「新時代」は、最初意図がわからなかったが靴を脱いで新しい令和の時代に前を向いて走っていく女性の動きをとらえている。しかし作者が意図したKoToo運動のことが画面からは伝わりにくかった。


とそれぞれ解説しました。