【開催報告】審査委員によるギャラリートークを開催(1)

【開催報告】審査委員によるギャラリートークを開催(1)

1月25日(土)18時から展覧会場内で、本展審査委員によるギャラリートークを開催しました。
今回、お話しいただいたのは、審査委員を務める山田 諭 京都市美術館学芸課長。
大賞、優秀賞を中心に、今回の受賞作品について解説いただきました。

山田課長によると、今回の審査では、
・日本画の伝統的な技法で描かれ、技術的な完成度の高いもの
・日本画の技法とは思われないような新しい試みのもの
この2点が審査するうえでの材料になったとのこと。

また、日本画と洋画の違いとして、
洋画は制作を始めてすぐに画面に筆を入れ、修正を加えて、時には削って、完成させていく。
対して日本画は、写生、小下絵、大下絵と手順を踏んで、最終的に本画に取り掛かるので、書き直しや修正がない。

阿部瑞樹さんの「ゆらめくみち」は、ゆらぎや反射を描こうとする最近の若手の取組みだと思う。
戦後すぐの頃は、洋画への対抗からか、また素材の事情からか、厚塗りするような描き方が多かったが、最近はそこから脱却しようとしている作品が多い。

池上真紀さんの「幽幻」については、象の周りの生命体オーラのようなものが描かれているように思う。
京都の日本画には動物画の伝統がある。京都の若手画家だから、こういった描き方が出てくるのでしょう。

大賞受賞の監物紗羅さんの「心の音」は、たらし込み・にじみの技法を利用した作品で完成度が高い。

清水葉月さんの「間戸」は輪郭線を描くのではなく、筆の動きによって表現している、潔い描き方をしている作品。

山本雄教さんの「White noise」は審査会で「日本画と言っていいのか」という議論があった。
しかし、紙に鉄筆で描いたと思われるこの作品は、技法という点で日本画の延長線上の作品。ぜひ新しい試みをしてほしいと思う。

森萌衣さんの「追慕」は非常に高い表現技術で、伝統のラインに乗っている作品。

とそれぞれ受賞作品について解説しました。
伝統的な表現と新しい試みが見られる今回の「京都 日本画新展2020」の作品は、日本画について考えるよい機会となったのではないでしょうか。