ただいま京都府立堂本印象美術館では、「漆軒と印象 明治生まれの堂本兄弟・うるしと日本画の競演」を好評開催中。
さる3月10日(日)、本展の関連イベントとして「漆絵・蒔絵体験ワークショップ」が行われました。
実際にことしるべ担当記者が参加した様子を体験レポートとしてご報告します。
漆芸家として活躍した堂本漆軒にちなんで企画された本ワークショップ。
講師の佐藤貴彦先生(㈱佐藤喜代松商店 代表取締役)のご指導のもと、
漆塗りの丸皿の上に色漆で絵付け・金銀粉で蒔絵を施すといった内容です。
今回使用するのは本漆とのことで、かぶれないよう各参加者にエプロンや手袋が配られます。
①図案選び
まずは絵付けを行う図案を選びます。本展出品作から用意された漆軒や印象の図案がずらり。
私は、「少し難しいかな?」と思いつつ、カラスウリの図案を選びました。
②置き目(図案の転写)
最初に行うのは「置き目」と呼ばれる作業です。
選んだ図案の上に硫酸紙(半透明の薄い紙)を敷いて、弁柄(赤色の顔料)と漆を混ぜた弁柄漆で輪郭線をなぞって、図案を写していきます。
漆は粘性が高く、筆で細い線を引くのが難しい…!
苦労しながらもなんとか写し終えました!
次に、丸皿に転写させるため、図案を入れたい部分に転写紙を重ねてこすります。
(※作業に集中しすぎて、自身の経過写真が撮れなかったため、別の参加者の同過程の写真で紹介します)
転写紙をはがすと…あれ?失敗したかな??と思ってしまうほど、お皿にはうっすらとした線しか残っていません。
これでうまく作業が進められるのかと不安になってしまいましたが…
しかし安心!その上から金粉をまぶすとしっかりと線が浮かび上がってきました!
(記者の作品でも浮かび上がりました。ここから記者の作品に戻ります)
③絵付け・粉蒔き
次は、写した輪郭に沿って、色を付けていきます。
先生と相談した結果、ツタの部分と葉っぱの右側を金色・左側を銀色・実の部分を赤と金のグラデーションにすることに決めました。
金色の部分には金粉を蒔きつけるのですが、その下地として弁柄漆を薄く薄く塗っていきます。
やはり粘性が高いのでむらなく塗るのが難しい…!
下地が塗れたら、金粉を蒔きます。
穂先が直接漆に触れてしまうとダマになるので、金粉を介して蒔きつけることがコツだそうです。
金色の部分が浮かび上がりました!
続いては実の部分です。赤色の漆を塗っていきます。
ここは金色とのグラデーションにしたいので、金粉を蒔きすぎないように注意します。
銀色の部分に移ります。下地は緑色の漆です。
下地の色を変えることで、また色の表情に違いが出るそうです。
黒や赤のイメージが強い漆ですが、さまざまな色があるんですね…
金粉と混ざらないように気を付けながら銀粉を蒔きます。
最後に葉脈の線を、色漆で描いて描きます。
やっぱり漆で線を引くということはとにかく難しい!
細い線を引こうと力を抜くと漆がのらず、力を入れると線が太くなりとガタガタになってしまいます。
④完成
何はともあれ、これで今できる作業はすべて終了!
約2時間の作業でした。
周りに金粉がついた状態ですが、これは一週間乾かしてから拭うそうです。
なので最終的な完成は一週間後。今からとても楽しみです。
※3/19 追記
ワークショップ終了から一週間…周りの金粉を拭い取りついに完成!
ツヤツヤの黒の中に、図案が浮かび上がって綺麗です。
線のがたつきや塗残しもあり完璧とは言えませんが、なかなか良い出来ではないでしょうか。
◆皆さまの作品
他の参加者の皆さまの作品はこちら。
図案によって行う作業に違いがあったり、同じ図案でも表現が違っていたりと個性豊かで面白いですね。
◆ワークショップを体験してみて
今回のあくまで「体験」とのことで、実際の漆作品ではさらにいくつもの工程も重ねるそうですが、
それでもこの体験を行ったことで、出品作のこの作品や…
この作品などなど、
卓越した技術あってこその仕上がりなのだということがよくよく実感できました。
今後も、漆の作品を見るときは一層感慨深く見ることが出来そうです。
堂本漆軒の巧みな技術による漆作品と、堂本印象の多彩な日本画作品の競演を楽しめる
「漆軒と印象 明治生まれの堂本兄弟・うるしと日本画の競演」は3月17日まで!
会期残りわずかですので、お見逃しのないようお越しください。
本ワークショップ講師・佐藤貴彦先生が経営する株式会社 佐藤喜代松商店では、漆工芸教室も行っています。
その作品展示会が4月に開催されます。
期間中には体験ワークショップも開かれますので、漆塗りに興味のある方、ぜひお越しください。
漆工芸教室さとう 第13回作品展
会期:4月6日(土)~4月13日(土)
会場:株式会社 佐藤喜代松商店2階 ギャラリースペース(京都市北区平野宮西町105)
<漆塗り体験ワークショップ>
4月6・7・9・10・13日 各日10時の回/14時の回 要予約
蒔絵・拭き漆:¥2000 金継¥5000
※金継体験には修理する陶磁器が必要
TEL:075-461-9120
HP:https://urusi.co.jp/classroom/urushi_craftwork_classroom#