東京国立博物館で開催中の「フランス人間国宝展」に関連して、フランスのメトル・ダール(人間国宝)の陶芸職人ジャン・ジレルさんと、折り布職人ピエトロ・セミネリさんが、創業460余年の千總さんを訪れました。
ジャン・ジレルさん(左)、ピエトル・セミネリさん
陶芸職人で、40年にわたり「曜変天目茶碗」の再現研究を続けているジャン・ジレルさんは、千總さんを訪れる前日に、同じく陶芸家の樂吉左衞門氏を訪ねました。15代、約450年にわたる歴史を持つ“樂焼”。歴代のさまざまな作品を見たジャンさんは「黒茶碗」と表現される伝統的な茶碗の中に、黒だけではないさまざまな色を見てとられたようです。ご自身が焼いている茶碗でも「同じ釉薬を使い同じように焼いても、それぞれが違った色や表情を見せる」と、遠く離れたフランスと京都で共通点を感じとられていいました。
「フランスでは“樂焼”というと一般的には「楽に焼ける焼き物」として、趣味の延長と捉えられがちですが、それを当代の吉左衞門さんが“樂焼”というアートの分野に高められた」とも語りました。
一方、日本では聞きなれない折り布職人のピエトロ・セミネリさん。世界中の高級店から依頼を受ける同分野の第一人者です。以前来日された際に、着物を見られたことはあるようでしたが、同じ染織分野で460年を超える歴史を持つ千總さんから、改めて刺激を受けたようです。「“着物”というひとつの決まった形の中に、たくさんの歴史や技術、伝統、ストーリーまでもが描かれている。歴史あるデザインが、今の時代においてモダンにすら感じる」。
その後、千總さんのご好意で、歴代引き継がれてきた文様やギャラリーを観覧し、永年続いてきた“ものづくりのこころ”を感じ取ってもらえたことでしょう。