「私たちが観た能面展」
-京都大学観世会-
門松で飾られた入り口を抜けると、幽玄だった。数々の能面は暗い館内でほのかな薄明りを受け、幾重もの表情を見せている。
それは、能舞台で彼らが見せる一面とは一味違う。多くの来場者はその魅力に虜になっている様子だった。
時には、好奇心の詰まった眼差しで能面に間合いを詰める。
私自身、あれほどまでにさまざまな能面を間近に見たことはなかったが、能面と対面し続けると妙な親近感がわく、そんな初めての経験をした。
中でも興味深いのは能《綾鼓》及び《恋重荷》で使用される「鼓悪尉(つづみあくじょう)」と「重荷悪尉(おもにあくじょう)」の面。
両曲は類曲で、どちらも一目惚れした女に無理難題を課されて死んだ老人が鬼となり女に襲いかかるという話であるが、《綾鼓》では鬼がひたすら女を打ち懲らしめる一方で、《恋重荷》では守護神となり永遠に女のそばにいると言い残し消えていくという違いがある。
鼓悪尉/金剛家
重荷悪尉/篠山能楽資料館
「鼓悪尉」と「重荷悪尉」を比べると後者の表情の方が少し柔らかに見え、こうした曲柄の違いが表れているように感じた。(京都大学観世会 一箭 翼、橋本大樹)
※画像は特別に許可を取り撮影されたものです。通常、会場内は撮影禁止です。
京都大学観世会 1931年の創立で昨年90周年を迎えた。シテ方観世流能楽師の片山伸吾・田茂井廣道両師の指導の下、8名の部員が日々稽古に励んでいる。毎年11月に開催している「京都大学観世能」では落語やジャワ舞踊といった他の芸能の方に客演いただく特別企画を行うなど、公演として始めから終わりまで楽しめる舞台を目指している。今年は11月18日(金)17時開演、能《巴》他の演目を予定している。 |
展覧会は2月6日(日)まで。お見逃しなく!