「盃の友治」~「世間子息気質(江島其磧筆)」より

「盃の友治」~「世間子息気質(江島其磧筆)」より

『世間子息気質(せけんむすこかたぎ』江島其磧筆
江島其磧-えじまきせき(1666-1735)は浮世草子作家で、京都の大仏餅屋・村瀬正孝の子。70以上の浮世草子を書き、最も売れた作家のひとり。本作は、浮世草子気質もののはしりで、大店の息子の極端な性格から、騒動をおこしたり失敗したりする笑い話を集めた短編集です。


世間子息気質 江島其磧筆 1冊
江戸時代 正徳5年(1715年)

この中の、巻之一の第三「取付世帯は表向を張てゐる太鼓形気」に「友治盃金弐両」との記述があります。

これは、道楽息子が旅籠茶屋で部屋の道具類を川へ投げ捨てて遊び、茶屋の主人が二倍の値段を請求する場面です。
これにより、友治の盃が当時金一両(今の価値で7~10万円)であったこと、わざわざ「友治盃」と名前を記していることから、この時代、友治の名が高級な盃のブランドの様になっていたことが分かります。

挿図を見ると、部屋から川へ投げ捨てる息子の横で、請求書を書く主人が描かれています。
面白いのが、主人は捨てられた道具を川下で拾わせているのです。なんともちゃっかりとした主人です。




宝珠蒔絵盃 3口
梅樹蒔絵盃台 1基
江戸時代 18世紀 個人蔵


物語とともに美しい友治の盃をお楽しみください!


※全て友治の「友」は右肩に点あり