明治時代に入ると、政府は殖産興業や輸出振興政策を推進。ウィーン万国博覧会へ明治政府が正式参加したこともあって海外で日本美術の評価が高まり、それを受けて政府は国家戦略として工芸品の輸出に力を注ぎました。一方京都では、地場産業の振興を目的の一つとして京都府画学校が設立されるとともに、多くの日本画家が工芸図案制作に携わりました。
本展では、近代化していく社会の中で生み出された明治の美術品を展示しています。
今回は出品作品のうち、武蔵屋大関の「金蒔絵芝山花鳥図飾器」をご紹介します。
贅を尽くす、とはこのことでしょうか。
蓋の上には鷹の像、中央の球形の器部分には芝山細工の装飾、その側面には二匹の龍、そしてその全体を大きな銀の龍が支えるという構成になっています。
芝山細工とは貝殻やサンゴ・象牙を素地にはめ込む技法のことで、ここでは桜の木と花かご、鷹が表現されています。反対側は菊と藤の花に囲まれた二羽のニワトリの図柄なので両面で異なるデザインを楽しめます。
器の金地部分、台座部分にも細やかな装飾が施されているので隅々まで見どころ満載。
華美で装飾尽くしな豪華絢爛な一品です。