髙橋美子 ‐日々の暮らしと焼締め陶の姿‐

髙橋美子 ‐日々の暮らしと焼締め陶の姿‐

質感の異なる連続した稜線


素地は粘土紐を円柱状に積み上げて成形した後、丹念に削り出されれてゆく。

深く削られた頸部は粗く、丸く削りだされた膨らみのある胴部は滑らか。

削られた素地の凹凸で質感の違う、連続した稜線と面がつくりだされる。

輪花口花入
令和2
高23.5×口径13.3×頚径5.5×胴径13.8×底径6.6
個人蔵


丸みを帯びた穏やかなフォルムと、柔らかな焼肌の質感。カセのある侘びた情趣とともに、観者の触感を強く刺激する肌合いは、焼締めの特質を活かした表現だ。

また、削りや鎬を活かした鋭い線と、緩やかな曲面の細工には、近年の現代陶芸の動向のなかで顕著な、繊細で技巧的な一面もうかがわれる。

優美な造形とともに、作者の焼締め像を示す特性は、日常への強い意識にあるといえるだろう。

日々の暮らしとの関係のなかに、自身の焼締め陶の姿を見い出してゆく。

身近な香水瓶に着想を得たという本作は、そうした思考を示す象徴的な作例だ。

そこには、生活という視点から現代にアプローチしてゆく、作者独自の焼締め陶の姿が垣間見える。
 

髙橋美子

TAKAHASHI, Yoshiko

1988 滋賀県甲賀市信楽町生まれ

2012 京都府立陶工技術専門校やきもの成形科修了

2013 滋賀県立信楽窯業技術試験場大物ロクロ成形科修了 -修了後、父五代髙橋楽斎に師事しながら本格的な作陶活動に入る