飯山園子‐古代土器の美しさ

飯山園子‐古代土器の美しさ

揺らめく赤と黒の景色  

上下を逆にした器物を継ぎさやで浮かせ、ステンンレスパイプを被せた後に籾殻を入れて焼成。
焼成中にステンレスパイプを傾け、燃焼の速度や炎の動きに変化をつけながら、黒褐色と赤褐色の情感豊かな表情をつくりだしている。

 

炭化線紋鉢
令和2
高45.2×口径36.8
×底径13.4
個人蔵

 

雲から雨が線状に降り注ぎ、霞がたなびいてゆく。

山水画のような情景を、炭化焼成による焼締めで表現した作品である。

黒褐色と赤褐色のコントラストやグラデーションは、古代土器の美しさを想わせる。

かつて古墳時代の土師器は女性が手掛けたというが、本作の優しく朗らかな焼肌の表情は、それを示す証左なのかもしれない。

絵画的な焼肌の表現とともに、作者の焼締め像を示す特性は、造形への強い意識にあるといえるだろう。

真直ぐに立ち上がる現代的なフォルムは、赤土と炭化焼成の魅力を効果的に引き出しながら、観者を新たな信楽焼のイメージへと導いてゆく。

そこからは作者が探求してきた、焼締め陶の姿を感じ取ることができるだろう。


飯山園子

IIYAMA, Sonoko

1974 福島県田村市船引町生まれ

2001 滋賀県立信楽窯業技術試験場釉薬科・ 小物ロクロ成形科修了-在籍中ペルー・チュルカナスの古代黒色土器から炭化焼成に出会う

2002 信楽・朝宮に単室式穴窯を築窯-'05信楽・畑に窯を移築して工房を開く

2003 鈴木茂至氏・鈴木工友氏(信楽)のアシスタントとしてフランス・プロヴァンスで作陶・薪窯焼成

2009 中里隆氏(唐津)のアシスタントを務め、岐阜(花ノ木窯/土岐市)やアンダーソンランチ(アメリカ)で南蛮や薪窯焼成