片身替わりの窯変
本作では落ち着いた緋色を得るため、蛙目(がいろめ)土や信楽特有の土が、素地土に用いられている。
また、自然釉や焦げなど動きのある景色は、口縁部を火前に横倒しの状態で窯詰めするなどの工夫で得られたものである。
信楽壺
令和2
高34.0×口径13.0
×胴径33.0×底径14.8
個人蔵
緋色と焦げが片身替わりに現れた、均整の取れた美しいフォルム。
穏やかな色合いの緋色とは対照的に、仄かに紫色を呈した焦げや自然釉が流れる肌合いは多彩で変化に富む。
本作に認められる特性は、窯変の景色とフォルムが調和した、現代的なデザイン感覚にあるといえるだろう。
野に咲く花や草木と焼締めが、ともに活かされる“花を活けた時に映える壺”。
作陶の一方で生け花を学ぶ作者は、その姿を理想に陶土を探し求め、自身で築いた窯で、さまざまな焼成を試みながら、窯変の魅力を現代に紡ぎだしてゆく。
華やぎのある窯変と自然が融和したイメージ。
そこには、現代の日常の生活空間を意識した、作者の造形思考と焼締め像が垣間見える。
保井可愛 YASUI, Kaai 1974 滋賀県大津市生まれ 2000 滋賀県立信楽窯業技術試験場ロクロ科修了-'01同試験場デザイン科修了 2003 澤清嗣氏(信楽)に師事-薪窯焼成について学ぶ 2007 独立築窯-同年内にもう一基窯を築く |