丸みのあるフォルム
炭化焼成では薪をくべつつ窯を全閉した後、還元状態で温度を下げ、素地に炭素を吸着させる。
外側から叩き締められた本作は、素地に炭素が吸着しているため強度に優れ、さらに丸い形状は収縮圧を分散させる効果がある。
炭化たたき壺
令和2
高(H)27.7×口径(MD)13.8
×胴径(D)28.4×底径(BD)11.0
個人蔵
黒灰色に煤けた炭化焼成の素地に、自然釉が口縁から胴裾へと、緩やかに流れる窯変の焼肌。
鈍色の雲が広がる空を想わせる、素地と自然釉の色調の濃淡は、再生赤土から得られた景色だ。
赤土をベースに化粧土や蛙目(がいろめ)土が混ざりあう素地土が、窯変の景色に豊かな表情をつくりだす。
こうした焼締め像とともに、作者の造形感覚を顕著に示しているのが、丸みを帯びた穏やかなフォルムである。
叩き棒から掌に感じる、土の反応に感覚を研ぎ澄ませ、膨らみのある姿が立ち上げられてゆく。
静かに佇み時の流れを伝える、苔むした石のように、情景に溶け込む自然との境目のないイメージ。
そうしたモノトーンの景色のなかに、作者の焼締め陶の姿が認められる。
迫 能弘 SAKO, Yoshihiro 1992 辻清明氏(東京)に師事、作陶を志す 1994 石川県立九谷焼技術研修所卒業-その後信楽の窯元・谷寛窯で修業 2000 甲賀市信楽町にて独立-'07 同町宮町に転居、'10 穴窯築窯、'12 二基目を築窯 2017 滋賀県立陶芸の森派遣プログラム(台湾/台南芸術大学)
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