ワイヤーと削り鉋の面取り
本作の陶土には蛙目(がいろめ)土が用いられている。
石英の粒が多く含まれた土を面取りで削ると、筋や穴が素地の表面にできる 。
それを指先に感じながら、そのまま引いたり、浮かせたりすることで、土の柔らかさと粗く力強い感触が表現されている。
信楽五段重
令和2
高34.5×幅17.2×奥行17.2
個人蔵
塊から削り出された土の豊かな質感が、焼肌に陰影を帯びた緋色をつくりだす。
露出した山肌を想わせる、重厚なフォルムの存在感は、自然の姿を彷彿とさせる。
土の柔らかくヌメリのある触感、多種多彩な変化に富む表情。
そうした土の魅力が、本作では面取りを効果的に用いて表現されている。
道具を通して指先に土の弾力を感じながら、作者はイメージを導き出す。
無垢(むく)な質感の魅力を損なわないよう、極力土には直接手を触れないようにしているという。
乾燥の度合いを見はかりつつ、土から感じる微妙な感覚に、神経を研ぎ澄まして、力の加減を調整してゆく。
そこから紡ぎ出されるリズムとフォルムに、土に向き合う作者の感性が垣間見える。
澤 克典 SAWA, Katsunori 1980 滋賀県甲賀市信楽町生まれ 2002 滋賀県立信楽窯業技術試験場素地焼成科修了-鈴木五郎氏(愛知)に師事 2005 信楽に戻り独立、本格的に作陶活動をはじめる 2013 滋賀県立陶芸の森創作研修館スタジオアーティスト |