<2022.08.11>プレ記念講演会が開催されました!

<2022.08.11>プレ記念講演会が開催されました!

秋季特別展「博覧」
プレ記念講演会

「南極観測越冬隊の1年間」
~私の南極生活と天然石集めのきっかけ~

 

9月17日(土)から開催される、龍谷ミュージアム・秋季特別展「博覧-近代京都の集め見せる力-」開幕に先立ち、天然石の収集家であり、第38次・45次南極観測越冬隊の料理人を務めた北田克治さんの講演会が開催されました!


 

北田克治さんは大阪府出身。京都の料亭や料理旅館で修業ののち、1994年から現在に至るまで、国際日本文化研究センター内レストラン「赤おに」の店長・料理人を務めておられます。途中、1997年7月~99年3月/2003年7月~05年3月まで、国立極地研究所に出向し、第38次・45次南極観測越冬隊料理人として各1年間、現地での調理係の任にあたられました。

幼いころから、一つとして同じもののない石に惹かれていたそう。現在は、レストラン「赤おに」での仕事の傍ら、天然石の収集・販売もされています。

 

知られざる、南極観測越冬隊の生活とは?

 

――― 南極大陸では、何を調査していた?

 

・氷のボーリング調査

南極大陸の面積は、日本の約37倍。南極の平均標高は1800mもあり、高いところでは4000mになる場所も。日本では、標高3800mに「ドームふじ」という基地を作り、氷の層のボーリング調査が行われています。南極では氷が溶けずにその時代の空気を取り込んだ状態で積み重なっていくため「大気の貯金箱」に例えらます。当時採取に成功した表面から2500m下の氷には、約3000万年前の空気がつまっているそう。より深い氷を調べることは、つまりより昔の空気の状態を知ることができるのです。

・隕石の調査

氷の中に閉じ込められた何万年も前の隕石が、溶けだした氷から表出することがあります。日本の観測隊では、10年に1度研究資料として200個ほど持ち帰ります。地表に落ちてすぐに氷漬けになるため、研究資料としては、非常に保存状態がよいそう。

 

――― いざ、南極大陸へ

南極へ行くまでには入念な健康診断や訓練を受ける必要があります。それをクリアすると同時に、料理人としては隊員たちの1年分の食材を手配しなければなりません。年間で1人あたり1t以上、全体で50tにもなる食材を検討・購入し、南極へ運び込みます。食材は1年の後半になるとやりくりが大変です。あらかじめ全ての献立を考えるのではなく、現地で残りの食材とを鑑みながら献立を考えるそうです。

いよいよ出発です。荷物を積み込んだ海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」に乗り込み、途中オーストラリアにも寄港しつつ、約50日間の航海を経て南極大陸へ。南極では研究者以外にも、北田さんのような料理人はもちろんのこと、生きていくために必要な電気工事責任者や通信技術者、医師、木工職人なども含まれる30人ほどの隊で1年間を過ごします。

南極大陸へ到着すると、研究調査のための「昭和基地」を運営していた前隊との引継ぎを行い、南極の厳しい環境やブリザード等で傷んだ基地の補修など、新しい1年を過ごすための準備を約1カ月で行います。限られた人手であらゆる作業を行うため、専門外の作業にも関わります。例えばコンクリートを作るのはお医者さん、とび職の作業をするのは料理人の北田さんといったように、本職を越えて作業を行うそうです。

 

――― 南極大陸での生活を快適にすごすために

南極での生活は日本と異なり、ブリザードの発生等で外にも出られないような日が続くこともあり、基地に閉じこもりきりで曜日感覚がなくなりがちです。そのため、土曜日はカレーの日として、毎週種類の異なるカレーを作っていたとか。

ほかにも、「娯楽係」「スポーツ係」「バー係」「映画係」などの係が設けられ、毎月誕生日会を催したり、スポーツ大会が開催されたり、基地の中にあるバーカウンターを使いお酒を楽しんだり(もちろん本業である研究調査の後にです)。桜のない南極大陸で、手作りの桜と北田さん特製のお弁当で、お花見を開催したとか。長期にわたる南極生活での生活にメリハリを出すために、日々の楽しみを作る工夫がなされていたそうです。

 

――― 隊員たちの食事

食事は、隊員たちの1日の楽しみの一つ。毎日飽きないようなメニュー構成を考えることも大切な仕事です。隊員一人一人の食欲も精神状態のバロメーター。食欲や元気のない隊員を気にかけ、厨房へ調理の手伝いに誘い出し、元気になってもらえるよう気に掛けることも。

持ち込む食材は冷凍保存しているため、期間中は生野菜などは食べられません。冷凍された状態から食材をおいしくいただくために、調理には工夫が必要です。それに加えて、在庫の限られた食材を最大限活用し無駄にしないようにするため、通常の料理店ではできないような、さまざまな料理の残りだしや煮凝りを別の料理に活用するなど、新たな美味しさを追究していたそう。隊員たちに"秘伝のレシピ"を尋ねられることも。

日本料理の修行を積んだ北田さんのアイデアで、昭和基地内で寿司屋が開店されることもありました。別係の隊員に手取り足取りで握り方を教え、小規模ながらも隊員へ楽しい時間を提供しました。催しのために、木工職人が寿司下駄などをささっと作ってくれたとか…。

 

――― お互いがフォローしあうために

医者やとび職人など専門の技術・知識をもった人も、複数人が隊に入ることがないため、限られた人数の中で作業まかなわなくてはなりません。
では、もしも、医者がケガをしたらだれが治療をするのか?基地の閉鎖的な環境の中では、そういった不足の事態にも備えて、調理隊員である北田さんも医療の知識を身に付けていたのだとか。
日本にいては、絶対にできないようなさまざまな職務も経験させてもらえたそうです。

 

 

 

日本に帰国してからは、雨が降るのが新鮮だったり(南極では雨が降りません)、生野菜のおいしさに感動したり、車の走行速度に驚いたり(南極での雪上車は時速5kmほどで走行していたそうです)…。
南極での「夢のような」生活を振り返る一方で、日本での生活の便利さやありがたさにも気づかされたと締めくくられ、講演は終了しました。

 


北田 克治氏

 

 


●子どもたちから北田さんへ質問

――Q
隊員は男性が多い?

――北田さん
私が参加した次の隊、第39次隊から越冬隊として初めて女性隊員が参加したそうです。私が2回目に参加した第45次隊には、医者や氷の研究者として女性が参加されていました。

 

――Q
南極はマイナス何十度と極寒なのに、なぜ冷凍庫が必要?

――北田さん
南極は、寒いとはいえ1日の中で気温差があります。食材は温度差に弱く、3日も外に置いておくと冷凍焼けをおこして質が落ちてしまいますので、-25℃で温度が一定の冷凍庫が必要なのです。

 

――Q
南極大陸で危なかったことは?

――北田さん
昭和基地から1000km離れたドームふじへ向かう時、スコップでも割れない堅い氷の上で転び、頭を切りました。大事には至りませんでしたが、-50℃にもなる環境の氷は、雪上車が通ったあとでもびくともしません。また潮の満ち引きで生じる氷の割れ目も雪が積もり分かりにくいです。別の隊員が落ちてしまったことも…

 


北田氏が収集された、貴重な天然石も展示いただきました!
子供たち興味津々…

 

於:龍谷大学大宮学舎東黌101教室

 

秋季特別展「博覧ー近代京都の集め見せる力-」は9月17日(土)開幕!

明治維新後、博覧会や博物館は日本の近代化を進める上で重要な役割を担ってきました。中でも、西本願寺を会場として開催された「京都博覧会」は、日本初の博覧会として多くの観覧者を集めました。本展では、「京都博覧会」をはじめ、西本願寺が独自の手法で企画した「本願寺蒐覧会」や、龍谷大図書館に設立された「仏教児童博物館」、私設の自然史系博物館「平瀬貝類博物館」を、古写真や文献資料約200点から、当時の展示の工夫や意義を探ります!

※お得な前売り券発売中

開催期間 2022年9月17日(土)~2022年11月23日(水)
時間 10:00~17:00(入館は、閉館の30分前まで)
休館日 月曜日、9月20日、10月11日(ただし、9月19日、10月10日は開館)
会場 龍谷大学 龍谷ミュージアム
京都市下京区堀川通正面下ル(西本願寺前)
ホームページ https://museum.ryukoku.ac.jp/
料金 一般|1300(1100)円
高大生|900(700)円
小中生|500(400)円
※( )内は、前売りおよび20名以上の団体料金
※小学生未満、障がい者手帳などの交付を受けている方、およびその介護者1名は無料
※前売り券は、2022年8月10日(水)~9月16日(金)まで、龍谷ミュージアムHP、ローソンチケット(Lコード:53597)、セブンチケットなどで販売
※入館は、龍谷ミュージアムHPからのご予約優先制です。
お問い合わせ 龍谷大学 龍谷ミュージアム
Tel.075-351-2500
主催/後援など 主催|龍谷大学 龍谷ミュージアム、京都新聞
特別協力|浄土真宗本願寺派、本山 本願寺
後援|京都府、京都市、南あわじ市、京都府教育委員会、京都市教育委員会、南あわじ市教育委員会、(公社)京都府観光連盟、(公社)京都市観光協会、NHK京都放送局、KBS京都、エフエム京都