③家形埴輪(史跡甲立古墳)

③家形埴輪(史跡甲立古墳)

 家形埴輪(いえがたはにわ) 広島県安芸高田市 史跡甲立古墳 古墳時代前期 安芸高田市教育委員会 所蔵


 前方後円墳の墳頂部(ふんちょうぶ)に立て並べられた5基の家形埴輪のひとつ。高さは68.3センチで、高床式の建物を表します。注目すべき点は、これらの家形埴輪は墳頂部に石を敷いて作った区画に整然と並んでいたことで、古墳での祭祀(さいし)の実態を物語っています。

 踊る人物や武人など、ついついユーモラスな人々の姿に目が行きがちな埴輪ですが、そうした人物をかたどる埴輪は古墳時代の後半に現れたものです。最初の埴輪は円筒埴輪という筒形のもので、壺などを載せる台を表現しています。やがて有力者の権威を示す道具などをかたどった形象埴輪が出現し、家形埴輪もそうした流れの中で現れます。埴輪の変遷は、古墳で行われた儀礼や祭祀の変化とともにあったという訳です。

 では、なぜ、家形の埴輪なのでしょうか。亡き有力者の生前の生活の場を示すのでしょうか,それとも、死後の魂が宿る場なのでしょうか。まだまだ答えは分かっていませんが、当時の人たちが古墳をどういうものと考えていたのかを知るヒントがここにはありそうです。

(文化庁記念物課 文部科学技官 川畑 純)

「発掘された日本列島2016」展は9月11日(日)まで、大津市御陵町の大津市歴史博物館で開催。月曜休館。問い合わせは同博物館=電話077―521―2100へ。