細見コレクション 集う人々
-描かれた江戸のおしゃれ-
Gathering-Fashionable mind in Edo Paintings from the Hosomi Collection-
集まりやお出かけのままならない今日、
作品の世界に飛び込んで人々のエネルギーを体感してみませんか。
さまざまな時代やジャンルを象徴する作品で構成され、時に「日本美術の教科書」と称されることもある細見コレクション。本展ではコレクションの中から、流行・文化の発信地に集う人々を描く名所遊楽図や祭礼図、葛飾北斎の肉筆画の名品「五美人図」、様々な身分や立ち場の装いを描いた「江戸風俗図巻」など、時代の先端をいく人々の美意識、往時の個性豊かなファッションが描かれた江戸時代の絵画を調度品とともに紹介します。展示室には、これまでになく描かれた大勢の人々がおしゃれをして集結しています。
第1章 名所に集う人々
桃山時代後期から江戸時代前期にかけて、京都をはじめとして奈良や江戸の名所や祭礼などに焦点を当てた風俗画が多く描かれました。 新名所や人気の観光スポットに繰り出す人々や、花見や芝居見物、祭りや踊りに熱中する人々の様子からは、今にも喧噪の賑わいが聞こえてきそうです。 絵を描かせた誰か、描いた絵師、そして生き生きと描かれた人々のエネルギーみなぎる絵画世界に、私たち鑑賞者も時空を超えて出かけてみませんか。
江戸名所遊楽図屛風 6曲1隻 江戸前期 細見美術館蔵
[作品解説]大きな伽藍をみせる画面中央の浅草寺。左上には梅若丸伝説を伝える木母寺が描かれ、右上に向かって隅田川が流れている。下方には、歌舞伎小屋、人形浄瑠璃の小屋、遊郭などが連なる。古くから知られる名所と新しい遊興地を組み合わせ、新興都市江戸の活気を示そうという作者の意図が汲み取れる。明暦の大火(1657年)以前の江戸を描く屛風は少なく、極めて貴重な作例。 |
【展示室紹介】
祗園祭礼図屛風 6曲1双 江戸前期 細見美術館蔵
祇園祭の内、前祭と後祭の2回にわたり行われていた山鉾巡行の様子が描かれています。
近寄ってみてみると…当時の山鉾巡行の様子が細やかに描かれているのがわかります。沢山の山鉾、巡行に随行する人々、見物する町の人々の姿が見られます。
江戸名所図屛風 4曲1隻 江戸前期 細見美術館蔵(部分)
上野寛永寺、浅草、新吉原など江戸の東側の名所が描かれています。よく見ると「やなか」「上野」など、東京の地名が小さく記載されています。
現在の都会の様子を思い浮かべつつ、かつての時間に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
犬追物図屛風 6曲1双 江戸前期 細見美術館蔵
「犬追物」は流鏑馬などとともに、鎌倉時代に起こった武芸のひとつで、騎手が先の丸い矢で犬を射る競技。
本図は右隻に、競技の始まる前の様子を、左隻には大繩に待機する射手と犬放、大繩から外に逃げた犬を追う射手の二場面が描かれています。
近寄ってよく見てみると、楽しそうな見物人の姿が。
こちらはお化粧中?の人々。何かを顔に塗っているのでしょうか?
なにやら物見遊山を楽しむ人々も。
大きな屛風の中には、沢山の人々、そして沢山の場面が。ぜひ実物を見て、屛風の中を探検してみてください。
第2章 男の出で立ち、女の着こなし
色鮮やかで絢爛豪華な装いが主流だった江戸前期。人々が集う場所はさながらファッションショーの会場のよう。武士のフォーマルな姿や風流に興じる庶民の、華やかな色彩や模様が目をひきます。 度々の奢侈(しゃし)禁令により華美な装いなどが禁じられた江戸中期以降、男も女も格子や縞などのシンプルな柄、ベーシックな色味のきものを纏(まと)うようになります。一見地味に見える装いですが、裾や裏地などに工夫を凝らして個性を発揮。粋な美意識がモードを生み出してきました。
五美人図 葛飾北斎 1幅 江戸後期 細見美術館蔵
[作品解説] 反物を前に思案する娘を中心に、立場や年齢の異なる5人の女性たちを描く。 娘の前の風呂敷包みには「本店」 と書かれ、名のある呉服店から好みを伺う品が いくつも届いた様子。新年の晴れ着選びか、婚礼の支度だろう。女性たちはいくつもの三角形を成すように配され、北斎の40代後半の構築的な画風が面白い。「正月品定め図」とも称され、広く親しまれてきた。 |
【展示紹介】
夜鷹図 葛飾北斎 1幅 江戸後期 細見美術館蔵
静かに柳がそよぐ下、顔の見えない一人の夜鷹がひっそりとたたずんでいます。
こうもりのように柳の蔭で客を引くとされた夜鷹ですが、この後ろ姿には凛としたものが感じられます。
※夜鷹とは、江戸の最下層の遊女のこと。
元禄踊り図押絵貼屛風 中野其玉 6曲1双 明治時代 細見美術館蔵
目に飛び込んでくる色彩。現代の感覚からすると、かなり攻めた色の着物ばかり。みなさん楽しそうです。
かわいらしい少女が持つうちわには、「琳派」を彷彿とさせる図像が描かれています。
第3章 時世粧 (いまようすがた)
異国の行列、遊里、店先、祭事や日常のひとこま―様々な場面に生きる人々の姿を描く風俗画には、往時の空気までもが写されています。 流行の先端もそれ以前の姿も、絵画に託されて今に甦ります。
江戸風俗図巻(部分) 1巻 江戸後期 細見美術館蔵
[作品解説]江戸後期のさまざまな身分、職業の男女26人を解説を交えながら列記した図巻。戯作者山東京伝の名を記す文化五(1808)年の序文によると、作品の内容はさらに14、5年前(寛政5、6年頃)のものと判明する。18世紀末の江戸のファッションが階層別に具体的に描かれ、服装史、風俗史な どにおいて極めて有用な資料。画家については歌川豊国とする説が近年強い支持を得ている。 |
【展示紹介】
全て江戸風俗図巻より、田舎娘(左)と吉原の花魁(右)。
同じく江戸風俗図巻より、箱入り娘。
着物だけではなく、表情までその人物の特徴が表れています。
会期は8月15日まで!ぜひご覧ください。
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