第一章 現代 現代作家の花咲く器 より
黒地堆二彩花小紋飾鉢(くろじついにさいはなこもん)/ 谷野明夫
信楽を拠点に活躍する陶芸家・谷野明夫(1949- )制作の「黒地堆二彩花小紋飾鉢」(2008年制作)。
谷野明夫の作品づくりは、器のかたちと装飾(模様)を同時進行で考案します。
先にかたちを完成させてしまうと、そこに模様を当てはめてしまうことになり、それでは美しい作品はできないのだといいます。
器の素地にスクラッチによって描かれた花々はリズム感にあふれています。
模様は撥水剤を使った独自の象嵌技法(素地を彫り、異なる色の土を嵌めて文様を表わす)によって表現されます。
作品のデザイン・ソースとなっているのは、日課である散歩中に信楽の自然の風景の中で目にする草花たちです。
中でも3枚以上の多くの花びらを持つ花に魅力を感じるそうです。
重なり合って咲く小さな花々、絶妙に虫が喰った葉のかたちなど、その時々にふと目にとまった草花に注目します。
しかしその場でスケッチはせずに印象だけを持ち帰り、工房に戻った後にそれぞれの器をどのような作品にするかを考えながら、花の連続模様を生み出していきます。
谷野作品の最大の魅力は、現代的なデザイン感覚と陶芸の伝統的技法の融合にあるといえるでしょう。
谷野 明夫
1978年 信楽に陶房を構える
1985年 日本工芸会正会員
2001年 甲賀市無形文化財保持者(信楽焼)認定
日本伝統工芸展の出品、個展を中心に活動
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