【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 183】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「決断するとき」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 183】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「決断するとき」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
3月のオススメはこちら!

良心か、沈黙か。社会的沈黙の共犯関係に葛藤する男の物語。

現代アイルランド文学の旗手、クレア・キーガンの『ほんのささやかなこと』は、冬の情景やアイルランドの生活がとてもシンプルな言葉で積み重ねられ、ささやかな日々の“違和感”を描いた、慎ましくも胸を打つ小説です。
今回紹介する映画『決断するとき』は、この小説に惚れ込んだキリアン・マーフィー(『オッペンハイマー』で第96回アカデミー賞主演男優賞に輝きました)が映画化を熱望し、主人公の中年男性を演じた作品です。
映画『マグダレンの祈り』(2002年)で日本でも紹介された、アイルランドで実在した「マグダレン洗濯所」での人権侵害を背景にしつつ、その周りで暮らす善良な庶民であるひとりの中年男性が感じた葛藤を描いていきます。

1985年、アイルランドの小さな町。
炭鉱商人として生計を立て、4人の娘と妻とともに慎ましく暮らすビル・ファーロングは、クリスマスが近づくある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、酷い扱いを受ける少女たちを目撃します。
そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。
絶対的権力を持つ教会に盾突くことは許されず、見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、過去の記憶から良心の呵責に悩みます…。

映画は、小説の内容から大きく逸脱することはなく、葛藤を抱える現在と過去の記憶が行ったり来たりする構成になっています。
彼の感情はセリフでは語られません。
言葉を抑え、沈黙と内面の葛藤を徹底的に演じ切るキリアン・マーフィーの演技に身を委ねるうちに、ビルという男が抱える痛み、脆さ、美しさ、そして恥という感情がリアルに差し迫ってきます。
静かで控えめながら力強い結末を湛えた一作となっています。
原作の小説とあわせて読むのもおすすめです。

 

執筆:川添結生(京都シネマ)



3月20日(金)公開 
決断するとき
(原題)Small Things Like These
2024/アイルランド/98分
監督:ティム・ミーランツ
出演:キリアン・マーフィー、アイリーン・ウォルシュ、ミシェル・フェアリー、クレア・ダン、ヘレン・ビーハン、エミリー・ワトソン
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【上映スケジュール】
上映時間などの詳細は京都シネマ公式ホームページにてご確認下さい。



京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。

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