「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
8月のオススメ作品はこちら!
ヴァカンス映画を極めたヴァカンス映画の名手による冒険ドキュメンタリー。
いろんな人のいろんな記憶のなかに宿るいろんな形の青春がぎゅっと凝縮されているヴァカンス映画。
かつてエリック・ロメールが撮り、ジャック・ロジエが撮ったフランスの夏とは社会も様変わりしているけれど、その煌びやかなエッセンスを現代に継承しつつ、社会を照射するギヨーム・ブラックの傑作『宝島』が、一週間限定で上映です。
夏が大嫌いなひとでも大丈夫。自分にもかつて訪れたように思える夏の思い出を振り返っては、なんだか胸がかき乱れて幸福な気持ちにさせてくれるでしょう。
エリック・ロメールの『友だちの恋人』の舞台にもなったパリ近郊セルジー=ポントワーズにあるレジャーアイランドの繁忙期。ここは、ある者にとっては冒険、誘惑、危険を冒す場所。
またはある者にとっては避難、逃避の場所のようです。世界の喧噪とどこかで共鳴しながら、歓喜あふれる遊泳場から人目につかない秘密の片隅、そして子どもたちの夢見る王国まで、今ひと夏の探検がはじまります…。
冒頭、保護者がいないために施設内に入れてもらえない男の子たちが、川を泳いで侵入を試みるシーンに、子どもたちの「やってはいけないことをやる」というささやかな冒険と抵抗の物語が、この映画の根幹をなすのだろうと期待させます。
と同時に、ブラックが撮るヴァカンス映画には、フランスの移民社会という現実とも共鳴していきます。
男の子たちが女の子を口説いたり、かつてのヴァカンスの思い出を振り返ったり、小さな弟の世話をしながら夏を過ごす男の子など…、
さまざまな物語を持つ人々が抱える喜び、悲しみ、深刻な瞬間が映し出されていきます。「いま」過ぎ去っていってはもう戻ってこないささやかでもキラキラ光る様子を見ているだけで温かな多幸感に満ちる。
京都のジメジメとした夏を吹き飛ばす幸福さ。
8月2日(金)から上映のブラックによる短編「リンダとイリナ」とあわせて、夏を満喫してください。
執筆:川添結生氏(京都シネマ)
8/16公開 『宝島』
(原題)L’Île au Trésor
2018/仏/97分
監督:ギヨーム・ブラック
©bathysphere 2018
【上映スケジュール】
詳しくは京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。
京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/