【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 133】京都シネマSTAFFの今月のオススメ『美しき仕事 4Kレストア版』

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 133】京都シネマSTAFFの今月のオススメ『美しき仕事 4Kレストア版』

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
6月のオススメ作品はこちら!

 

アフリカの大地と荘厳な音楽。目が眩むようなあの夏の切なくも美しい日々。

世界的に確固たる地位を築いているフランスの映画監督クレール・ドゥニによる幻の傑作『美しき仕事』が、ついに劇場公開となります!
2016年にオスカーを受賞した『ムーンライト』(バリー・ジェンキンス監督)や昨年日本でも公開され大きな話題を呼んだ『aftersun/アフターサン』(シャーロット・ウェルズ監督)にも多大なる影響を与えたことでも知られている本作は、目が眩むほどの青いアフリカの海岸を背景に、フランスの外人部隊とそれを率いる指揮官の日々を描いたもの。
つねに新たなジャンル、スタイルを追求しながら、人間の欲望、暴力、愛のかたちを瑞々しく映し出してきたクレール・ドゥニの紛うことなき傑作は、ぜひ劇場で!

フランス・マルセイユ。
かつてアフリカのジブチの駐留していた外人部隊所属の上級曹長ガルーは、彼がそこを去らざるを得なかった過去を回想録として執筆しています。
彼の厳しい規律のもと、戦争に備えて道路を修理したり、訓練を行ったりと日々を過ごしていました。
そしてガルーにとって、この部隊は人生であり故郷でした。
そこへ新兵のジル・サルタンが部隊へとやってきます。
背が高く美しいサルタンは、見かけによらず勇敢で優しい男で、たちまち上官フォレスティエや兵士たちから信頼を勝ち取りました。
そんな彼に対して、ガルーは嫉妬と羨望の入り混じった感情を募らせ、やがて彼を破滅させようと画策しはじめます……。

クレール・ドゥニ監督は、かつて来日した場で「天才」と名指されたことに感謝を示しながらも「でも私は、自分が天才ではないことを自覚しています。
(… …)私は映画を全面的に信頼しているのです」と反応しました。
この言葉が示すかのように、ストーリーを重視しない『美しき仕事』にはとても混乱させられると同時に、魅了されました。
回想と現在が入り乱れ、境界線はあいまいです。
会話は最小限にとどめられ、ガルーが心の内を語ることはほとんどありません。
ガルーの執着と嫉妬心の種はいったいなんだったのか。それは同性愛的な欲望なのか。
いま何を見せられているのか分からなくなることがあります。
ただただ、ジブチの紺碧の海と、太陽が照り付ける砂漠のなかで、男性の身体の躍動をリズミカルに捉える映像を見続けることになります。
しかし、軍隊という規律のなかで抑圧されたなにかが弾ける瞬間が史上最高のエンディングで、故郷を失い、かつての輝きを失った肉体の再起を想起させる爆発的な喜びにあふれたラストに魅了されます。
混乱も、美しさも、残酷さも。それが終わったあとに映像という表現に信頼を置いているドゥニ監督のすばらしさに打ちのめされるのです。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



6月14日公開
『美しき仕事 4Kレストア版』

(原題)Beau Travail PG12/1999/仏/93分
監督:クレール・ドゥニ
出演:ドニ・ラヴァン、ミシェル・シュボール、グレゴワール・コラン、リシャール・クルセ
©LA SEPT ARTE – TANAIS COM – SM FIMS – 1998
*京都シネマでは、2K上映になります。

詳細・上映スケジュールは京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい



京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。

問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/