【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 103】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「エリザベート 1878」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 103】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「エリザベート 1878」


「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
8月のオススメ作品はこちら!

 

 

挑発的で革新的!ヨーロッパ宮廷一の美貌をもつエリザベートの一年。

“シシィ”の愛称で知られる皇妃エリザベートは、オーストリアで最も美しく、反抗的で悲劇的な人物として記録されており、いまもなお彼女の伝説は人々を魅了しています。しかし、美しさを称えられた彼女は、晩年、女中以外に顔を見せることをやめ、ベールや扇、日傘で顔を隠すようになったともいわれています。マリー・クロイツァー監督の『エリザベート1878』は、美の象徴でいることを強制されたエリザベートが、その“象徴”を失いつつある40歳の1年間にフォーカスを当て、これまで描かれることのなかった新たな「シシィ」像を描き出しました。若さと美しさという基準によってのみ存在価値を測られてきたエリザベートの素顔を打ち立てる革新的な一作『エリザベート1878』を上映します。

1877年のクリスマス・イヴ。40歳の誕生日を迎えたエリザベートは、容姿の衰えに過剰に敏感になっていました。周囲の者はつねに彼女の美を話題にし、公務で外に出るたびに、多くの好奇の目に晒されるから。コルセットをきつく締めあげ、食べる量は少なく運動量は多いという過度のダイエットを続けながら、体型を維持する日々。そのうえ、男性のそばで賢く、行儀よく、出しゃばらずに美しさを振りまくことだけを求められる生活に、次第に孤独と不安を深めていきます。人生に対する情熱や、愛への渇望はどこにいってしまったのか。周りの期待に応えながら誇張されたイメージに反抗し、失いつつある自分を取り戻すために思いついたある計画とは…。


本作で、俳優ヴィッキー・クリープスが体現するエリザベートは、タバコをひっきりなしに吸ったり、中指を突き立てたり、糞くらえと舌を出す。かなり自由に想像された反抗的な肖像は、史実に忠実ではないかもしれないけれど、彼女の孤独との闘いを表現するのに大成功しています。時代考証を無視する代わりに、現代にもつながる、男性優位社会に抑え込まれた深い絶望と軽蔑が浮き彫りになります。しかし、映画は、彼女をフェミニストのロールモデルにも、社会の犠牲者にも仕立てあげようとはしていません。抑圧のなかで反抗し、自らのアイデンティティをふたたび取り戻そうともがく彼女は、強くて、貪欲で、でも弱くもあり、ナルシストで、自分勝手。そんな一筋縄では語れない彼女の鮮烈でいて、挑発的な複雑さに魅了されてほしいです。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



8/25公開
『エリザベート 1878』
原題:Corsage
PG12/2022年/オーストリア、ルクセンブルク、ドイツ、フランス/114分

監督:マリー・クロイツァー
出演:ヴィッキー・クリープス、フロリアン・タイヒトマイスター、カタリーナ・ローレンツ ほか
配給:トランスフォーマー、ミモザフィルムズ
© 2022 FILM AG - SAMSA FILM - KOMPLIZEN FILM - KAZAK PRODUCTIONS - ORF FILM/FERNSEH-ABKOMMEN - ZDF/ARTE - ARTE FRANCE CINEMA
■公式サイト https://transformer.co.jp/m/corsage/

【上映スケジュール】
詳しくは京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。



京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/