「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
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小さき麦の花
互いに寄り添い、大地に寄り添う、ある夫婦の愛の物語。
中国で、公開2ヶ月を経てから若い世代を中心に社会現象となる大ヒットを飛ばし、〈奇跡〉とまで書き立てたられた異例の作品『小さき麦の花』がいよいよ京都シネマで公開します。2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエと体に障がいがある内気なクイインは、互いに家族から疎まれていました。そんな二人が、厄介払いされるかのように、見合い結婚し夫婦になります。ぎこちなく日々を重ねていくふたりは、やがて互いを慈しみ、力を合わせて、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも生きようとします。しかし、変わりゆく時代の波にさらされていき…。
映画では、貧しい農民として生きることの辛さが描かれています。つくった作物は安く買いたたかれ、家族からはこきを使われて…。しかし、映画を観終わると不思議とふたりの幸せな日々と、ぎこちなくも確かな愛の形ばかり思い出してしまいます。それは、描かれた彼らの日々のなかには、表面的ではない、こころにずっしりと刻まれた親密さが築かれているからなのだと思います。「愛してる」なんてだいそれた言葉はありません。幼い頃から疎まれ、誰にも信頼を寄せることなく生きることを余儀なくされたふたりのかたくなになってしまった心がそっとひらけていく、そんな過程を、中国の四季を背景にじっくりと映し出されたとき、土を身近には感じなくなったわたしたちの固い心をもそっと拓いていく。とてもあたたかな作品です。
この、シンプルで繊細で豊かな映画の監督を務めたのは『僕たちの家に帰ろう』でも中国が抱える環境問題や社会発展について問題提起を起こしたリー・ルイジュン監督。彼は、世界3大映画祭でキャリアを重ねる期待の監督です。美しい愛の物語は、リー監督のこれまでの持ち味であるリアリズムとファンタジックな演出がかけあわされた表現が大きく貢献し、よりいっそうの深みを与えます。3人目の家族ともいえる食いしん坊のロバにもご注目ください!
執筆:川添結生氏(京都シネマ)
2/24(金)公開
『小さき麦の花』
(原題)隠入塵煙
2022年/中国/133分/G
監 督:リー・ルイジュン
出 演:ウー・レンリン、ハイ・チン
字 幕:磯尚太郎
字幕監修:樋口裕子
配 給:マジックアワー、ムヴィオラ
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【上映スケジュール】
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