【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 87】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「MEN 同じ顔の男たち」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 87】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「MEN 同じ顔の男たち」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
12月のオススメ作品はこちら!

 

ようこそ禁断の悪夢へ。

製作会社・A24と『エクス・マキナ』の鬼才アレックス・ガーランドによる、圧倒的な映像美でありながら今年一番の不穏な物語が京都シネマで公開します。恐怖を駆り立てる画づくりと不気味なサウンドスケープが、わたしたちを不安にさせ、グロテスクな造形はトラウマ級。ホラーというジャンル映画を通して「トキシック・マスキュリニティ」と、男性社会のなかで植え付けられた精神的な恐怖の実体を描きます。

舞台となるのは、現代英国、おとぎ話のなかから出てきたような牧歌的な田舎町。ロンドンで暮らしている主人公ハーパーは、離婚話の末に目の前で夫の死を目撃してしまいます。心の傷を癒すために田舎町を訪れたハーパーが案内されたのは、豪華なカントリーハウス。管理人ジェフリーは、風変わり。豊かな森を満喫しようとひとりで散歩にでかけた先で、全裸の男に追いかけられたり、教会で遭遇した少年には罵られたりと、癒しのための時間は不穏さを纏い始め…。

タイトルにもあるように田舎町で出会うのは、みな「同じ顔の男」たち。ロリー・キニア演じる町の複数の男たちは、利己的で支配的、恩着せがましく略奪的です。それは、ハーパーが田舎に来る前から感じていた個人的な経験と記憶に基づいているものであることが後半では示唆されるのですが、彼女の悪夢が観客と共有されるとき、その経験は、社会的なものでもあることも気付かされます。ホラーというジャンルは映画史のなかでもとりわけ時代背景を映す鏡として、人気のあるジャンルです。恐怖や脅威にさらされた人間の心理を体験することで個人や社会に対する権力を浮き彫りにしていきます。わたしたちはハーパーの悪夢的な恐怖を追体験することで、現実に存在する目には見えないジェンダーダイナミクスを経験するのです。ハーパーの精神世界を表現する映像美とサウンドスケープは、劇場でぜひ体感してもらいたい怪作!

執筆:川添結生氏(京都シネマ)




12/9(金)公開
『MEN 同じ顔の男たち
(原題)MEN
R15+/2022年/イギリス/100分
監督:アレックス・ガーランド
出演:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン、サラ・トゥーミィ
©2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

【上映スケジュール】
京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723