【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 81】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「みんなのヴァカンス」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 81】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「みんなのヴァカンス」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
9月のオススメ作品はこちら!

みんなのヴァカンス

 

ギヨーム・ブラックによるちいさな夏の冒険物語。

京都人にとっての夏が、祇園祭ならば、フランス人にとっての夏はヴァカンスだ。
そのためかフランス映画には、ヴァカンス映画という正当な系譜が存在し、現在も多くのヴァカンス映画が新たに生まれています。
ヴァカンス映画の名作といえば、たとえばエリック・ロメールの『海辺のポーリーヌ』、たとえばジャック・ロジエの『アデュー・フィリピーヌ』、すこしはずれてジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇』…。
夏の避暑地を舞台に、ひと夏の淡く、移ろいやすい恋愛模様をみずみずしいタッチで描いた作品は、ムシムシとした夏ばかりを経験している京都育ちのわたしからみれば、憧れものです。
エリック・ロメールとジャック・ロジエ、ふたりの巨匠の正統な後継者としてヴァカンス映画を極める奇特な映画作家ギヨーム・ブラックの最新作『みんなのヴァカンス』を紹介します。

パリのある夏の夜。セーヌ川のほとりで、フィリックスはアルマに出会い、夢のような一夜を過ごすが、翌朝、アルマは家族とともにヴァカンスに旅立ってしまう。
フェリックスは、親友のシェリフと、相乗りアプリで知り合ったきまじめな青年エドゥアールを道連れに、アポなしでアルマに会いに行く。
ユーモアはあるが自分勝手な黒人フェリックスと、ママに頭があがらない白人のお坊ちゃんのエドゥアールは、早々にケンカをはじめ、そのふたりの仲を取り持とうとする気の優しいシェリフ。
はたして、珍道中はいかに…!

ギヨーム・ブラックの作品は、負け組でちょっと情けなくて、ゆるっとしていてやさしくて、なによりも楽しい。
この映画自体がヴァカンスのようです。
そこにはひと夏で経験する、喜びと悲しみ、滑稽でいて深刻な瞬間が刻みつけられているのです。
ちいさな瞬間でも、人生にさざ波が立つように、ひと夏の経験は一生ものになるのです。
だから、フランスの人びとはヴァカンスというものを大事にするのかもしれません。
黒人であるフェリックスとシェリフ、そして白人でおそらくブルジョワであろうエドゥアールの関係性の背景には必然的に社会的差異も横たわっていますが、その違いを横断して心を通わせていく様子もすばらしい。
若者たちの失敗、反省、その小さな冒険物語は、観終わってもなお夏の日差しと木漏れ日の温かな多幸感に満ちています。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



9/16(金)公開
『みんなのヴァカンス』
(原題)À l’abordage/2020/仏/100分
監督:ギヨーム・ブラック
出演:エリック・ナンチュアング、サリフ・シセ、エドゥアール・シュルピス
©2020 – Geko Films – ARTE France

【上映スケジュール】
9月16日、17日、20-22日:15:20~
9月18日、19日:10:00~
9月23~29日:18:35~
※10月6日終映予定

 

 


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
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