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【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 62】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 62】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
1月のオススメ作品はこちら!

 フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

 

映画界騒然の豪華キャスト!映画と活字文化に愛を捧げる、W・アンダーソン最新作!

2021年のカンヌ国際映画祭でお披露目されたウェス・アンダーソンの最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』。
ウェス組の常連から、今回ティモシー・シャラメやリナ・クードリなども初参加し、鮮やかなスーツに身を包んだウェス組にSNSの画面ながらついうっとり…。
前作『犬が島』で日本カルチャーに愛をささげたウェスは、今回あらゆる活字カルチャーとフランス映画への愛をたっぷりに「物語」の可能性について物語っていきます。

舞台は、フランスの架空の街“アンニュイ・シュール・ブラゼ”にある「フレンチ・ディスパッチ」誌編集部。
名物編集長が集めた癖のある記者たちが活躍中。
ところが、編集長が心臓まひで急死し、彼の遺言により「フレンチ・ディスパッチ」は廃刊を迎えることに。
本作は、追悼号にして最終号となった「フレンチ・ディスパッチ」の紙面をノンストップの仕掛け絵本のように繰り広げていきます。

物語は大きく4つ。
自転車レポ-ターのプロローグにはじまり、服役中の芸術家による期待の新作の顛末をつづった《確固たる名作》、短編の名手メイヴィス・ギャラントをモデルにした記者がつづった学生運動の日記《宣言書の改訂》、そしてフィナーレを飾るのは、ジェームズ・ボールドウィンとA・J・リーブリングを混ぜ合わせたような孤独な異邦人記者が巻き込まれる大騒動を追った《警察署長の食事室》。
ウェスのその稀なるセンスによって構築された形式主義的構図は、もはや孤高の地位にありますが、それでもその構図を破壊してまで人間という不器用で愚かでもある登場人物たちにユーモアと愛おしさを見出していくのです。
わたしのお気に入りは、俳優レア・セドゥに捧げられたともいえる《確固なる名作》です。
彼女にあてがきされたという芸術家のミューズでもあり看守でもあるシモーヌという役は、これまでのフィルモグラフィで映画ファンを夢中にしてきたレア・セドゥが持つ所有を許さないまなざしと孤独にリスペクトがこめられた役でした。
わたしたちは個人に対して事象を超えたところでさまざまなものを見出し、希望と絶望を勝手に抱いてしまう。
書かれた物語、映し出された映像には、作り手が見出したなにか、とても尊いものが永遠に刻み込まれる。
そのことをこんなにも愛おしく「物語」として描き出すウェス・アンダーソンは、やっぱり愛の人なのだと思います。
オフビートな笑いは、相変わらずですが、過去作を超える膨大でいて、早口のセリフと情報量の波に圧倒されつつ、ぜひこの映画を楽しんでほしいです。

 

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



1/28(金)公開
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
(原題)The French Dispatch of the Liberty, Kansas Evening Sun
2021/米/103分
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ビル・マーレイ、ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

※上映スケジュールは京都シネマHPをご確認ください


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723