「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
9月のオススメ作品はこちら!
ショック・ドゥ・フューチャー
エレクトロ・ミュージック黎明期を舞台に、若き女性ミュージシャンの一日を描いた青春音楽映画。
現在、世界で最も聞かれている音楽、その第三位に君臨するといわれているエレクトロ・ミュージック。
このジャンルの世界的なブレイク前夜であり、まだまだキワモノ扱いをされていた1978年パリを舞台に、未来的な音の響きに魅せられた女性ミュージシャンのアナと友人たちの一日を描いた爽やかで心躍る青春音楽映画を紹介します。
ロックやジャズでは多くのミュージシャンが描かれるのに対し、エレクトロの世界では人物に焦点が当たることはあまりなかったのではないでしょうか。
また、男性優位な音楽業界での女性の苦悩もしっかりと描きこまれ、音楽映画とフェミニズムをかけ合わせたすばらしい作品となっています。
1978年、パリ。
若手ミュージシャンのアナは、部屋ごと貸してもらったシンセサイザーで、依頼されたCMの作曲に取り掛かっていたものの納得のいく曲が書けずにいます。
締め切りは過ぎ、担当者は何度も急かしにやってくる。
なのに、機材が壊れ、修理を呼ぶ羽目に。
しかし、アナは修理屋が抱えていた日本製のリズムマシンRoland CR-78に魅せられてしまいます。
頼み込んで貸してもらった機材に夢中になっているさなか、CM曲の収録を依頼されていた歌手のクララが現れ、ふたりは即興で曲を作り始めます…。
アナの部屋にあるレコードの意味を探り始めると止まりません。
ブライアン・イーノやジョルジオ・モルダー、女性パンクロックの始祖パティ・スミスなど。
なによりも、大きくてゴツゴツしているシンセサイザーの姿が、神々しい光に包まれているように美しく魅力的に映されます。
マーク・コリン監督のフェティッシュな視線をそのまま映したかのようで、機械のことなんて一切わからないわたしでも、なんだかドキドキしてしまいます。
アナが曲を作りはじめるまえに、機材のスイッチを静かに入れていくシーンは、どこか神聖な儀式を思わせるとても美しいワンシーン。
インスピレーションから一曲が出来上がるまでの過程をミニマムな作りでドキュメントしていく手際は、さすがマーク・コリン監督といえるのではないでしょうか。
世界的に活躍するユニット“ヌーヴェル・ヴァーグ”のプロデューサーであり、音楽家である彼ならではの世界観なのかもしれません。
じわじわと興奮がわきあがる一作です。
執筆:川添結生氏(京都シネマ)
「ショック・ドゥ・フューチャー」
9月17日(金)公開/PG12 (原題)Le Choc du Futur
2019/仏/78分
監督:マルク・コラン
出演:アルマ・ホドロフスキー、フィリップ・ルボ、ジェフリー・キャリー、クララ・ルチアーニ、コリーヌ
©2019 Nebo Productions – The Perfect Kiss Films – Sogni Vera Films
※上映スケジュールは京都シネマHPをご確認ください
京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
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