【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 39】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「天国にちがいない」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 39】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「天国にちがいない」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
2月のオススメ作品はこちら!


アイロニーに満ちたユーモアでひとりの男の旅路を美しく軽やかに演出。

喜劇作家バスター・キートンのようなとぼけ顔を連発する現代の喜劇王エリア・スレイマン。
2002年に製作された過去作『D.I.』は、第55回カンヌ国際映画祭に出品され、いままでだれも観たことがないパレスチナ映画に世界中が驚嘆しました。
しかも、それがシリアスな戦争ものとかではなく、パレスチナ問題を(コントのような異色の!)コメディに仕立て上げたというんだから、驚きもひとしおです。
その後、寡作ながらも独自の映画スタイルをしっかり確立し、上品でいて親密な映画を撮りつづけるエリア・スレイマンの約10年ぶりの新作長編映画『天国にちがいない』が日本に届きました。
今作は、カンヌ国際映画祭パルムドールの有力候補と目されつつ、特別賞とFIPRESCI賞をW受賞しました。

冒頭、荘厳な儀式のなか、「扉よ、その身を開け」という男。「開けてやらない」という建物の中にいる男。
ふたりの押し問答ではじまるこの映画。
訳が分からないと思いますが、エリア・スレイマンは映画のなかの映像でコントをやってのけてみせます!
スレイマン演じるES氏は、映画監督の役。新作の企画を持ってイスラエル領ナザレから新天地パリ、そしてニューヨークへ旅をする様子が描かれていきます。
パリでは、美しい街の景観や人々に見惚れる一方、炊き出しの列に並ぶ大勢の人々や街を走る戦車を見ます。
そのうえ、映画のエージェントには、「パレスチナ色が弱い」「もっと、パレスチナな要素がほしい」と拒否されてしまい…。

エリア・スレイマンの映画には、サイレント時代の映画のように、バスター・キートンはもちろんのこと、『僕の伯父さん』で知られるフランスの監督ジャック・タチなんかにも通じるものがあります。
振り付けと動きで笑いを生み出していくやり口は、凄まじい多幸感を得られます。
そのうえで、日常のほんちょっとしたシーンを毒っ気を含んだ鋭い社会批判としてわたしたちに投げかけてくるのです。
わたしたちの世界がいま確実に変わり続けていることは確かですが、失っては新しいなにかが生み出されていく世界でわたしたちは何を大切にしたいでしょうか。
そんなことを考えてしまう一本です。

執筆:川添結生氏(京都シネマ)



天国にちがいない  
(原題)It Must Be Heaven
2/5(金)公開 
2019/仏、カタール、独、カナダ、トルコ、パレスチナ/102分
監督:エリア・スレイマン
出演:エリア・スレイマン、ガエル・ガルシア・ベルナル、タリク・コプティ、アリ・スレイマン
©2019 RECTANGLE PRODUCTIONS – PALLAS FILM – POSSIBLES MEDIA II – ZEYNO FILM – ZDF – TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION 

【上映スケジュール】
2/5 11:30~、13:30~
2/6~11 11:30~、13:30~、18:20~ 
2/12~18 9:35~、16:05~ 
2/19~25 18:20~

 


京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/