『三冊名物記』は、江戸時代中期に編纂された茶道具の名物集。茶入をはじめ、香炉、花入、茶碗、掛物など、三百数十点の茶道具が掲載され、器形を描いた彩色図や詳しい作品情報、道具によっては伝来までもが記載されている画期的な資料です。
茶道資料館学芸員・橘倫子さんに『三冊名物記』と展覧会の見どころを解説していただきます。展覧会をよりお楽しみいただくために、ここで『三冊名物記』の頁を開いてみましょう。
今回ご紹介する見どころは……
『三冊名物記』の展覧会と聞くと、江戸時代の書物がずらっと並んでいるイメージがあるかもしれませんが、実はずらっと並んでいるのは名物茶道具の数々です。
「北野茄子」「遅桜」「広沢」「飛鳥川」「吹上文琳」などの名物茶入、重要文化財の「堅手茶碗 銘長崎」「玳玻盞 鸞天目」などの茶碗、さらに千利休ゆかりの「南蛮芋頭水指」「竹一重切花入 銘園城寺(11月7日~)」など、著名な茶道具を堪能することが出来ます。
唐物北野茄子茶入 野村美術館蔵
唐物肩衝茶入 銘遅桜 三井記念美術館蔵
さらに、『三冊名物記』に記録された付属品の仕覆(袋)、挽家(ひきや:茶入を収納する容器)、箱等もあわせて展示しており、記録された内容や描かれた図と現存する茶道具を対比しながらの鑑賞もお薦めです。