第一章より~緋襷大皿、窯道具・陶板

第一章より~緋襷大皿、窯道具・陶板

展示室で圧倒的な存在感を放つ丸い作品を紹介します。

前回紹介した緋襷鶴首徳利と同じく海揚りの大皿。鶴首もそれまでになかった形でしたが、これほど大きな皿もこの時代には見られないものでした。
素地土は海中での変質が感じられる色目ですが、縦横に走る緋襷(ひだすき)は見事です。


緋襷大皿 桃山時代
16-17世紀 岡山県立美術館

お気づきの方もおられると思いますが、この緋襷は本展のチラシ・ポスターデザインの一部になっています。


 

知っているとなお面白い
◆◆◆◆◆用語解説◆◆◆◆◆

緋襷(ひだすき)-hidasuki

窯変の一種で、焼成によって現れる赤い襷状の稲藁の跡。日常雑貨として大量生産されたすり鉢や皿の類は、窯内のスペースを有効に活用するため、数枚が重ねられて窯詰めされ、茶壺や徳利などもしばしば大きい壺や甕の中に入れ子にして焼かれた。その際、作品同士の焼き付きを防ぐ目的で、間に高温に強い稲藁を当てて窯詰めする。この藁が燃焼する際、藁のアルカリ分と胎土の鉄分とが化合して緋色の藁の跡が残る。

緋襷大皿(部分) 桃山時代
16-17世紀 岡山県立美術館

もうひとつの丸い作品、陶板

備前の窯焚きは日数が長く、その分回数は少なくなるため、効率よく大量に焼成できるようさまざまな工夫がされてきました。窯道具のひとつである陶板は、焼成中に高温でへたらないように厚みを持たせているため、相当な重量感があります。


陶板 桃山時代
 16-17世紀 MIHO MUSEUM

大きな甕を焼く際、蓋をするように陶板を置き、その上に大小の器物をのせて窯詰めされます。焼成後その痕跡が赤丸の抜けとして残る現象は牡丹餅(ぼたもち)と称され、備前の見どころである景色のひとつとなっています。
大小さまざまな大きさがある陶板。花器や大皿として見立てられ、多くの茶人や数奇者に好まれました。

裏面はまるでクッキーのような肌で、荒々しい様はまさに土くれです。


陶板(裏面) 桃山時代
 16-17世紀 MIHO MUSEUM

 

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◆◆◆◆◆用語解説◆◆◆◆◆

牡丹餅(ぼたもち)-Botamochi

窯変の一種で、焼成によって生じる円形の跡。饅頭抜け、抜け肌とも呼ばれる。窯詰めの際、空間を効率的に使うため、平鉢や皿などの平らな器物の上に丸形の焼台や徳利など、円形の小物を重ね置くと、その部分に灰が掛からなかったり、炎が当たらなかったりして、丸く赤褐色や白色に抜け、まるで牡丹餅を並べたように見えることから、この名で呼ばれる。

陶板(部分) 桃山時代
 16-17世紀 MIHO MUSEUM


展示室に一列に並べられた陶板は窯道具であることを忘れさせ、その景色のひとつひとつが見ものです。
ぜひ実際にご覧ください!!