相国寺承天閣美術館
「禅寺に伝わるものがたり」
Ⅰ期:仏教説話と漢故事 2023年3月11日~5月7日
Ⅱ期:無外如大尼生誕八百年記念 女性と仏教 2023年5月28日~7月16日
相国寺承天閣美術館にて展覧会「禅寺に伝わるものがたり」を開催中です。
第Ⅰ期「仏教説話と漢故事」の様子を紹介します。
仏教の教えや禅の教えの中には、さまざまな高僧たちの逸話が散りばめられています。
それらが経典に文字情報として載り、それが絵画化されて仏教美術が花開きました。
また寺院空間を荘厳する作品の意匠には、中国の故事を由来とした画題も多く取り入れられました。
本展観は、仏教説話や漢故事を題材とした寺宝の数々を紹介する展示となっています。
まず最初の第一展示室では「第一章 観音様のものがたり」として、文室宗言筆の大作《観音三十三変相図》全三十三幅が迎えます。
展示室全体にずらりと並んだ様は圧巻!
本作は、東福寺に伝わる明兆筆《補陀三十三身像》を写したものとして知られるそうですが、文室宗言ならではのオリジナルの要素も随所にみられるのだとか。
本作は法華経の中で説かれる、観音様が三十三の姿になって人々を救いにくる様子を絵画化したものです。
文室宗言筆《観音三十三変相図 童男童女身》
文室宗言筆《観音三十三変相図 大自在天身》
これらは観音様が人々に教えを説いている様子です。
子どもたちに向けて説く時は自身の姿も子供にするなど、相手に応じてふさわしい姿に変えて現れるそうです。
上半分の円の中にいる観音様から雲が吹き出しのように伸びて繋がっている先が、変身した観音様の姿を表しているそうです。
また観音様が人々を危機から救う様子も描かれています。
この《観音三十三変相図 墜落金剛山》では、悪人に追われて崖から墜落した時に観音様に祈り、巨大な手で救われている様子が描かれています。
こちらの《観音三十三変相図 刀尋段段壊》では、刀で切り付けられそうになっても観音様に祈ることで、相手の刀が壊れてしまうという場面が描かれています。
観音様のものがたりのどんな場面が描かれているか、ぜひ一つ一つをじっくり見てもらいたいです。
第二展示室では、「第二章 お釈迦様のものがたり」「第三章 禅僧たちのものがたり」「第四章 大陸の先徳たちのものがたり」と続きます。
「第二章 お釈迦様のものがたり」では仏教を開いたお釈迦さまにまつわる逸話を題材にした作品が並びます。
こちらの狩野探信筆《中出山釈迦左右山水図》に描かれたお釈迦様は、髪や髭がぼさぼさで衣服も擦り切れてたワイルドな姿をしており、一般的なイメージのお釈迦様とは異なります。
これは、お釈迦様が悟りを開く前の、苦行の限界を知って山を離れる時の姿を描いたものだからだそうです。
「第三章 禅僧たちのものがたり」では、原在中筆《玄奘三蔵図》(※初公開)、曽我蕭白筆《寒山拾得図》(※初公開)など、禅宗の僧やその逸話を画題にした作品が並びます。
「第四章 大陸の先徳たちのものがたり」では中国の仙人や道士たちを描いた作品が並びます。
描かれた画題や物語だけでなく、価値のあるもののため謝礼や借金のカタとして贈られたなど、作品自体の経緯のエピソードにも注目です。
さまざまな「ものがたり」にまつわる寺宝を集めた本展観、第Ⅰ期は5月7日までの開催です。
5月3日には講座、5月6日はスライドトークも実施されます。お見逃しなく。
※本展は展示室内の写真撮影は禁止です。本記事では特別な許可を得て撮影・掲載しております
第Ⅰ期終了後は大幅な展示替えを行い、5月28日から第Ⅱ期「無外如大尼生誕八百年記念 女性と仏教」が始まります。
相国寺派寺院伝来の寺宝から、臨済宗の尼僧・無外如大尼の時代から近世に至るまでの女性と仏教のかかわりを探ります。
こちらもお楽しみに。
相国寺承天閣美術館「禅寺に伝わるものがたり」 |