《概要》
上路市剛はリアリズム彫刻を中⼼とした作品を精⼒的に発表しているアーティストです。思わず息をのむような⽣々しい肌の⾊彩、眼球や⽑髪の1本まで精緻に表現した作品を⽣み出す背景には、上路の⼈間に対する深い興味や探究⼼、そこから拡がるさまざまな美意識や問題意識が広がっています。京都教育⼤学教育学部美術領域の在学中に4年間を過ごし、第⼆の故郷ともいえる京都において開催する本展では「空也上人」など、上路の真⾻頂ともいえる肖像彫刻3作品と、肌の⾊の明暗を抽象画として表現した「Border」シリーズの新作を発表いたします。タイトルの「Border―境界線」とはどのような意味を持つのか、リアリズムの裏にある、上路市剛のさまざまな問い掛けが込められた作品をごゆっくりお楽しみください。
《「Border」について》「Border」はリアリズム彫刻の肌の塗装技術を使って、肌の色のみを抽出した作品です。この塗装技術は、ハリウッドの特殊メイク産業の中で培われたもので、赤・青・緑・黄・オレンジ・紫などのいわゆる「肌色」ではない複数の色を用いて肌の色を表現する技術です。この作品は色の違う面の組み合わせで出来ていて、マーク・ロスコの抽象画のような視覚効果を生み出していますが、実のところは、日焼け跡などの、肌の色に差がある箇所の境界線を描いています。人間の肌の色は千差万別です。その違いは、メラニンの密度に由来します。科学的な話をすると、人間の肌の色の違いは、黒とか白とか黄色などの「色の違い」ではなく、メラニンの密度の違いで、色彩学の用語でいうと「明度の違い」です。つまり人の肌の色は「暗いか、明るいか」と表現すべきなのです。
「Border」は彫刻作品の肌の色を抽出した「抽象画」でありながら、現実的なモティーフは「日焼けの境目」を描いていて、一方では、昨今大変な問題になっている「人種間の壁」に問題意識を感じながら作られた、複数の意味での「境界」をコンセプトとする作品です。(上路市剛)
「Border No.4」(左)「Border No.6」(右)/木製パネル、FRP、レジン、アクリル絵の具/100×80×5㎝
《展示に寄せて》今回のように京都で展示するのは実に7年振りとなり、それは僕が京都教育大学を卒業する間際に行った2015年3月ぶりの展覧会だという事になります。京都にいたのは大学の4年間のみだったのですが、僕にとっては大変思い出深い土地で、そこでの展示は特別に感じます。今回の展示は京都という事と、平安神宮の傍という立地から、和風な彫刻を揃えました。また本展では使える展示台が「六角形」であったことから、それも展示コンセプトに取り入れました。そのコンセプトとは、ずばり「6と3」です。特に仏教世界において「6と3」はとても重要な数字なのです。展示タイトルの「Border」とは何の「境界」なのかという事と併せて、僕が展示に込めた沢山の仕掛けを堪能してもらえたら嬉しいです。
《プロフィール》
【上路市剛 (かみじ・いちたか)】
略歴
1992年 大阪に生まれる
2011年 京都教育大学教育学部美術領域 入学
2015年 同大学 卒業
【賞歴】
2015年 SICF16 準グランプリ
【個展】
2019年 「Realism of Sculpture -The Place of Holiness-」(東京・A/Dギャラリー)
2019年 「Realism of Sculpture -A Reflection of Self-」(東京・清アートスペース)
2020年 「Realism of Sculpture」(東京・HOLE IN THE WALL)
2021年 「上路市剛作品展」(東京・銀座蔦屋書店)
2022年 「Border」(東京・リファーレ自由が丘) 他多数
【グループ展】
2019年 「INTERMEDIA ART PROJECT EXHIBITION」 (Neptune Gallery・台北)
2020年 「アーティストの本棚」(東京・みんなのギャラリー)
2020年 「ブレイク前夜 in 代官山ヒルサイド 時代を突っ走れ!小山登美夫セレクションのアーティスト38人」(ヒルサイドフォーラム・東京)
2020年 「UNTITLED」(東京・清アートスペース)
2021年 「アールグロリューPOPUP(人気作家抽選販売会)」(大丸東京店)
2022年「NUDE 礼賛ーおとこのからだ」(東京・DUB GALLERY AKIHABARA) 他多数
【アートフェア】
2020年 「LA ART SHOW」
2021年 「アートフェア東京」他多数
《トークイベント》10月22日(土)18時よりレセプションを行います(入退場自由)。上路市剛が在廊し、作品案内を行うほか、元川崎市岡本太郎美術館学芸員であり、現在オルタナティブスペース「京都場 KYOTO-ba」館長の仲野泰生氏をゲストに迎え「アーティストが作品に込める呪いとは何か」というテーマで語り合います。ぜひお気軽にお越しください。
日 時|2022年10月22日(土)18:00~20:00(クロストークは18:30~19:30)
参加申込|不要
参a加a費|無料
登 壇|上路市剛×仲野泰生氏(京都場 KYOTO-ba代表)
会 場|京都岡崎 蔦屋書店 GALLERY EN
※スペースの関係上、椅子のご用意がわずかとなります。着席ご希望の方はお早目にお越しください
【仲野泰生氏 】
略歴
1955年 東京生まれ
横浜国立大学大学院美術教育学研究科修了
1999年 川崎市岡本太郎美術館 学芸員として、開館記念「多面体・岡本太郎美術館-哄笑するダイナミズム」展 他企画展多数
2011年 岡本太郎生誕100年「人間・岡本太郎」展担当
2012年 「記憶の島-岡本太郎と宮本常一が撮った日本」展担当
川崎市岡本太郎美術館 学芸課長
2016年 「岡本太郎と中村正義-東京展」担当 同年4月、川崎市岡本太郎美術館定年退職後、メキシコにて「今道子写真展」をメキシコ・ベラクルス大学ギャラリーで企画
2017年 オルタナティブ・スペース京都場「KYOTO-ba」を4月に開館
2017年 嵯峨美術大学 非常勤講師
2022年 京都場開館5周年記念「個・身体・共同体」展を企画
《販売情報》
京都岡崎 蔦屋書店店頭およびアートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術手帖」にて、10月22日(土)10時より販売いたします。
https://oil.bijutsutecho.com/gallery/1022
※作品はプレセールスの状況により会期開始前に販売が終了することがあります。
「⿓燈⻤」(緑)「天燈⻤」(⾚)/シリコン、FRP、⾺⽑、その他/55×25×25cm
■開 催 期 間 2022年10月22日(土)~11月7日(月)
■時 間 8:00~20:00
■休 館 日 年中無休 ※近隣の催し物等により、休業する場合がございます。
■会 場 京都岡崎 蔦屋書店 GALLERY EN ウォール
(京都市左京区岡崎最勝寺町13 ロームシアター京都 パークプラザ1階)
■会 場 H P https://store.tsite.jp/kyoto-okazaki/
■特集ページ イベントページ
■問い合わせ 075-754-0008(営業時間内)
■主 催 京都岡崎 蔦屋書店
※終了⽇は変更になる場合があります。